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REPORT◎より安全に代替品を活用するための取り組みが開始
個人防護具の代替品を評価するサイトが登場

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と戦う医療現場にとって、喫緊の課題となっているのが個人防護具(PPE)不足への対策だろう。そのためSNSなどでは、医療者だけでなく様々な立場の人々が自身の工夫を公開している。だが、ネット上にばらばらに公開された代替品は、利用者が存在自体を探すのが大変なだけではなく、性能についても玉石混交だ。そこで4月27日に立ち上げられたのが「ACT AGAINST COVID19 医療用個人防護具の代替品 性能評価と作り方」(URL:https://covid-19-act.jp/ppe/)。様々用意されたPPEの代用品について専門家が評価し、デザイナーが見やすく整えたボランティアによるサイトだ。

 サイトでは、代替品をマスク、ゴーグルとフェイスシールド、ガウン、グローブ、感染防止アイテムの5つのカテゴリーに分け、それぞれ医療用の代替品として使えるか、再利用できるかなどの評価を行って掲示している。

 評価は感染症に詳しい医師や看護師などが担当。素材や構造などの他、可能なものは実際に作製して行った。個々の担当者が評価を行った後、改めてビジネスチャットアプリ(Slack)を使って複数人で評価の妥当性を検証。デザイナーが一般の人にも分かりやすく整えた上でそれぞれを公開した。評価対象となる代替品については、4月中旬より評価軸を検討しながら、担当者がそれぞれネットやメディアから情報を収集した。

 評価を担当した感染管理認定看護師の榮留富美子氏は、「医療従事者や患者を守るため、安全性を確保できるものに関する情報をしっかりと伝えていかなければいけないと思っている。善意に基づいているからといって、公開されている代替PPEの情報を全てそのままうのみにしていいわけではない。そのための評価システムだ」と話す。榮留氏は、表に出ている評価者だけでなく、感染管理認定看護師としてのネットワークを活用して代替品に対するアドバイスを受けたという。

情報収集のFBページも設置

 この企画を考えたのは、元厚生労働省の医系技官で現在衆議院議員の国光文乃氏だ。「医療現場からの要請を受けて、PPE不足の解消に向けて国や企業への働きかけを行ってきたが、解消のめどが立たない。困っている人と助けたい人をつなぐ方が効率的だと考えた」(国光氏)。当初は国にサイトを設置するよう働きかけたが、国や公的機関が代替品にお墨付きを与えるのは難しい。そこで、有志としてサイトを立ち上げることになった。

 まず国光氏は国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授の和田耕治氏に評価体制について相談。和田氏は職業感染制御研究会の有志を中心に評価チームを構築した。同時に、サイトの見せ方を工夫するため、企画当初から医療に詳しいデザイナーとしてカワセタケヒロ氏にアクセスした。どんなに有用なデータを集めても、見せ方が分かりにくければ使われないからだ。また、単なる有志のサイトでは信頼度が下がってしまうため、全日本病院協会日本医療法人協会の後援も取り付けた。

 同時に国光氏は全日本病院協会副会長の神野正博氏らと共同でFacebook上に「コロナ支援・医療介護福祉物品情報」(https://www.facebook.com/groups/ouentunagu/)というページを設置。現場で使われている代替品の情報を集められるようにした。「収集する枠組みとそれを評価するサイトはどちらも必要だと思っていた。ただ、それぞれが行いやすい方向が異なるため、サイト自体は分けた」(国光氏)。

 実は国光氏からサイト構築について打診を受けたカワセ氏も、国光氏同様の問題意識を持っていた。学生時代から医療系の学生との交流が深かったカワセ氏は、日本語以外を母国語とする人向けのコミュニケーションツールを有志のデザイナーやエンジニア、医師らと手掛け、さらなる援助ができないかについて模索を開始したところだったのだ。「医療者はコンテンツを持っているけれど、表に出すときにどの程度まで分かりやすくすればいいのかというノウハウを持っていない。一方で、多くのデザイナーが代替品のアイデアを出そうとしているが、医療安全に意識を向けられるデザイナーとそうでないデザイナーがいる。だが、それで安全性が担保されないものがうかつに広まってしまうと医療者の命を奪ってしまうため、メッセージを出す必要があると考えていた」と話す。

 もっとも、5月7日時点で「ACT AGAINST COVID19 医療用個人防護具の代替品 性能評価と作り方」に公開されているのはマスク2点、ゴーグル/フェイスシールド3点、ガウン3点の8点のみだ。「N95マスクなど、規格が決まっているものに関して代替品を扱ってよいのか、そもそものところで悩んでしまっているものもある」とカワセ氏は話す。加工者によって性能が変わってしまうものの評価も難しい。「我々の評価は主観的なものだが、それでも貴重なものだと認識している。いい加減な評価をしてしまうと、我々がフェイクメーカーになってしまう」(カワセ氏)として、情報提供は慎重に行う姿勢は堅持する。

 ただし、既にカテゴリーごとに3、4つ、評価が終わっているにもかかわらず掲載していないものがあるため、今後は増えていくことが期待される。また、代替品そのものだけでなく、消毒など、運用方法に関する情報も提供していく予定だ。

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