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トピック◎新型コロナウイルス感染症・PPE不足
透明ポリ袋を被ってでもCOVID-19をトリアージ

長崎市で本田内科医院を開業する本田孝也氏

 4月初旬。個人防護具の代用品の開発が話題になっていたころ、全国の開業医らが参加するメーリングリストで「透明ポリ袋で感染防御」の試行が始まった。医療用マスクをはじめ、フェイスシールドやガウンなどの医療資源が十分でない中、どうしたら医師自らの感染を防ぎつつ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)疑い例のトリアージを維持できるのか──。この問いの答えが、透明ポリ袋の活用だった。

 「透明ポリ袋で感染防御」プロジェクトの起点となったのが、1998年に誕生したメーリングリストCMINC(中央医療情報メーリングリスト)。「一緒に医療情報ネットワーク構築を」とのキャッチフレーズのもと、開業医をはじめ、臨床検査関係者や救急隊員、ジャーナリストや公務員などと様々な立場の人が参加している。現在の参加者は約700人で、中核の開業医は250人ほどだ。

 そのメーリングリストCMINCで、「ごみ袋de感染防御」というテーマの投稿があったのが4月初め。医療用マスクをはじめ、フェイスシールドやガウンなど個人防護具が枯渇し、早晩、COVID-19診療が立ち行かなくなることへの危惧から、代用品の開発が急展開を見せていたころに重なる。

 きっかけは、CMINCの管理人である安藤潔氏(荒川医院、東京都中央区)の発信だった。フェイスシールドの代用品になり得る情報を探索したところ、透明ポリ袋を使う方法が見つかった、というものだ。

安藤潔氏へのインタビューはこちら
「トリアージは開業医の役割」

ポリ袋のシールドでトリアージがスムーズに

写真1 45Lの透明ポリ袋を頭から被って、両手にロング手袋をつけて診察(本田氏による)

 この情報にメーリングリスト参加者の多くの医師が反応。早々に実践した1人が、長崎市で本田内科医院を開業する本田孝也氏だった。ウェブ取材で現状を聞いた。

── 透明ポリ袋を被っての診察は、どのようにしているのですか。

本田 45Lの透明ポリ袋を頭から被って、両手にロング手袋をつけて診察しています(写真1)。

── 全ての患者さんの診察で使うのですか。

本田 基本は熱のある患者さんだけです。私の診療所は構造的にCOVID-19疑い例とそうじゃない患者さんの動線を分けられないので、疑われる患者さんの場合は、車で来院してもらい、駐車場に止めた車の中で診察しています。まず電話で問診し、COVID-19患者さんとの接触歴の有無や行動歴などを確認します。その上で、透明ポリ袋を被って車に近づき、体温を測り、喉や顔色を診ます。

── トリアージが主な目的なわけですね。

本田 患者さんの状態を診て、COVID-19が疑われるのか、疑われる場合は軽症なの重症なのかの判断をします。COVID-19が疑われる場合は、PCR検査ができる施設を紹介します。私のところで検体採取はしていません。感染症が専門の医師に、透明ポリ袋を被っての診察について意見を求めましたが、通常の診察での感染防御には十分という意見でした。ただし、PCR検査のための検体採取には使えないと言われています。上半身はシールドされていますが、下半身は無防備だからです。

── 実践してみていかがですか。

本田 エアゾル対策としては、市販のフェイスシールドより格段に機密性に優れています。短時間なら呼吸も苦しくない。ただ、メガネが曇るのがやや難点です。市販のロング手袋は肘上まで覆えるので、医療用の手袋よりも防御性能が高いです。いずれも使い捨てで、入手が容易で安価なのがいいです。

── 短時間なら呼吸も苦しくないということですが、確か実践前にデータをとられていたようですが?

本田 45L透明ポリ袋を被り、立位で歩き、話しながら脈拍とSpO2(酸素飽和度)を測定しました。その結果が表1です。息苦しいのは酸素分圧の低下よりも、CO2の上昇によるものではないかと推測しています。今後は両脇に穴を開けるとかの工夫が必要かもしれません。

表1 45L透明ポリ袋を被り、立位で歩き、話しながら測定した脈拍とSpO2

── そもそもなぜポリ袋でシールドなのでしょうか。

本田 ご存知のようにPPEはどの医療機関も不足しています。なかなか手に入りません。それでも、COVID-19疑い例が受診することを前提に診療を続けないといけません。ですからPPEに代わるものが必要なのです。まだ改良が必要ですが、今の急場をしのぐにはポリ袋シールドが適していると思います。私が感染してしまったら患者さんにうつしてしまうかもしれないし、2週間は診療所を閉めないといけません。それに風評被害も起こり得ます。感染した私も重症化する可能性はあります。ですから、患者さんを守り、診療所機能を守り、自分の命を守るためには感染防御をしっかりしないといけません。

── 診療報酬で院内トリアージが点数化されました。透明ポリ袋による感染防御は保険請求できるのでしょうか。

本田 院内トリアージ実施料の算定にあたって当初、地方厚生局によっては、PCR検査を行う施設に限るというような見解を示すところもありました。最近の通知では、PCR検査を行う施設に限ることはない、となっていますので、要件を満たせば診療報酬の算定は行えています。ただし、透明ポリ袋の使用はあくまでも緊急時の手段であり、感染を完全に防御するものではないことに十分留意する必要があります。

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