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インタビュー◎COVID-19の拡大による診療所経営への影響
3月は500万円の減収に、オンライン診療を開始
みやはら耳鼻咽喉科(岡山市南区)院長の宮原孝和氏に聞く

 新型コロナウイルス感染症COVID-19)の拡大が続いている。耳鼻咽喉科ではCOVID-19が否定できない患者に対し、一定期間ネブライザー療法を控えるよう学会が推奨するなど、診療規模を縮小せざるを得ない状況だ。みやはら耳鼻咽喉科(岡山市南区)は、今年3月時点で前年同月比500万円(22%)の減収に見舞われた。院長の宮原孝和氏に、診療所の経営状況と今後の対応を聞いた(文中敬称略)。


──COVID-19が拡大する中、どのような体制で診療されているのでしょうか。

みやはら耳鼻咽喉科(岡山市南区)院長の宮原孝和氏

宮原 4月20日時点では、診療日や診療時間は変更せずに診療を続けています。当院には隔離室がないため、発熱や全身倦怠感などがあったり、嗅覚障害、味覚障害がある場合は当院を受診するのではなく、岡山県の相談窓口に連絡するよう案内しています。

 日本耳鼻咽喉科学会の対応ガイドには、COVID-19が否定できない患者に対し、一定期間ネブライザー療法を控えるとあります。ネブライザー療法を行うと患者が診察室にとどまることになり、患者同士の距離も約50cmと近いことから、当院ではネブライザー療法自体を取りやめました。

 院内では待合室が「三密」(「密閉」「密集」「密接」)状態になるのを避けるべく、待合室と診察室の窓を常時2カ所開けて換気しています。さらに、順番予約システムを導入しているため、自分の順番の5番前までは来院しないよう呼び掛けています。ほとんどの患者が車で受診するので、順番が来るまで車内で待ってもらい、待合室でも患者同士が一定の距離を保てるようにしています。

 このほか、感染拡大を防ぐ観点から、院長を含めスタッフ全員がマスクを着用しており、小学生以上の来院者にも着けてもらっています。手持ちのマスクがない患者(中学生以上)については、当院で確保してある大人用マスクを無償で提供し、次回からはマスクを着けて来院するよう求めています。

 4月中旬に岡山市保健所から「マスクを着用しているCOVID-19患者と濃厚接触した場合、医療従事者がマスクを着用していれば、眼の防護、ガウン、手袋着用のいずれかが欠けていても曝露リスクは低リスクと評価する」との見解を示す文書が送られてきたため、こうした措置を講じました。

──COVID-19の拡大による、経営面への影響をお聞かせください。

宮原 3月は外来患者の減少などに伴い、前年同月比500万円(22%)の減収となりました。4月20日時点では、4月も前年同月比170万円(20%)減と改善の兆しは見えていません。

 そもそも今年は暖冬で、岡山市ではスギ花粉の飛散が例年より早かったため、花粉症のピークが前倒しされていました。花粉の飛散量も昨年に比べて少なかったです。そのため、(1)COVID-19の感染拡大による受診抑制、(2)ネブライザー取りやめによる患者単価の減少、(3)花粉の飛散量の減少──の三重苦に見舞われました。昨年3月は1日平均252人の来院がありましたが、今年は200人を超える日はほとんどありませんでした。


──経営改善の兆しが見えない中、どのような対応を考えられているのでしょうか。

宮原 大幅な減収に対応する直近の策として、運転資金がショートしないよう、検査キットなどの消耗品の在庫量を減らしました。当院の売りの1つに、アレルギー迅速検査キット「イムノキャップ ラピッド 鼻炎・ぜんそくI」(以下、イムノ)を使った「約20分で判定できるアレルギー検査」があります。イムノは1キットにつき3回検査でき、納入価格は約2万1000円です。

 数年前にイムノの入荷が不安定になったことがあり、それ以降、当院では常時90キット(270人分)、約190万円相当の在庫を抱えていました。ところが、COVID-19の感染拡大で外来患者の減少が見込まれたこと、最近は供給も安定していることから、2月下旬以降に徐々に在庫を減らし、現在は最大でも6キット(18人分)しか持たないようにしています。約180万円相当の在庫を減らせた計算です。

 手元資金の目減りを最小限に抑えるため、政策金融機関による貸付事業の利用も検討しています。COVID-19の影響で一時的に業績が悪化した事業者向けに、日本政策金融公庫が新たな貸付事業を開始しました。災害発生時の融資制度に適用される利率から、さらに0.9ポイント低い利率を適用した「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と、低減した利率の利息部分を返還する「特別利子補給制度」を組み合わせた事業で、借り手にとっては実質無利子で融資を受けられるというものです。

 当院は今夏に電子カルテシステムのリプレースを検討しています。リプレース費用はもともと現金一括で支払うつもりでしたが、資金をできるだけ手元に残しておくため、この制度を利用したいと考えています。

 一方で、スタッフの不安を払拭するため、「2020年の年収保証」を打ち出しました。具体的には、「たとえクリニックの経営状況が悪化しても、月給や賞与原資を減らさず、昨年と同レベルの年収を保証します」と伝えました。景気の減退に伴い雇用情勢の悪化が見込まれる中、スタッフに安心して働き続けてもらうには、こうしたメッセージを発信することが経営者として重要だと判断しました。


──4月16日には緊急事態宣言の対象が全国に拡大され、外出自粛がさらに進みそうです。外来患者の減少への対応として、考えていることはありますか。

宮原 前述のように、自分の順番の5番前までは来院しないよう呼び掛けるなどの対応は取っていますが、それでも来院を控えたい患者は少なくないとみています。そこで、かぜや花粉症、アレルギー性鼻炎などで希望する患者に対し、オンライン診療を始めることにしました。

 厚生労働省が4月10日に発出した事務連絡で、初診から電話や情報通信機器を用いたオンライン診療を行うことが認められました(関連記事:オンラインによる初診が時限的に解禁)。ただ、耳鼻咽喉科の診療では視診や触診も重要となり、過去に1度も診たことのない患者をパソコンやスマートフォンを介して診察し、適切に診断・処方を行うのは難しいだろうと考えています。そのため当院では、「過去に当院を受診したことのある患者」に限定してオンライン診療を行うつもりです。

 オンライン診療の場合、薬剤については患者が希望する薬局に当院が処方箋情報をFAXなどで送付し、患者が薬局に取りに行くか、配送などの方法で受け取ってもらうことになります。配送であれば、患者は医療機関にも薬局にも立ち寄らずに薬を受け取れるわけです。かぜのような軽度の上気道症状や花粉症、アレルギー性鼻炎といった疾患に限定した上で、通院歴のある患者であれば、オンライン診療でトラブルを生じる可能性は低く、感染リスクを抑える意味でもメリットは大きいでしょう。

 当院で診療することを想定しているかぜや花粉症、アレルギー性鼻炎などはオンライン診療料の算定対象には含まれていないため、診療報酬上は電話等再診として再診料(73点)を算定することになります。院外処方の場合、算定できるのは再診料と処方箋料(68点)で、これ以外に電話やテレビ画像等の送受信にかかる費用通話料等)として1回につき770円(税込み)を徴収する予定です。外来診療であれば再診料と処方箋料に加えて外来管理加算(52点)を算定できるため、両者の差額は250円しかありません。処方箋の原本を薬局に郵送する切手代やオンライン診療システムの使用料、手間を考慮すれば、オンライン診療の方が利益は少ないでしょう。それでも、患者のニーズは高く、過去に当院を受診したことのある患者へのサービスとしては申し分ないと判断しました。

 通話料等を徴収する場合、サービスの内容や料金などについて文書で説明した上で、患者に署名してもらう必要があります。当院では3月下旬に患者への案内を開始し、4月20日時点で269人分の同意を取得しました。4週間処方が多いため、現時点でオンライン診療を実施した患者はまだ数人ですが、今後はオンライン診療に移行する患者が増えそうです。

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