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トピック◎厚生労働省クラスター班の調査から
永寿総合病院の院内感染に浮かぶ教訓
「手指衛生などが不十分になる場面もあった」

写真1 地元有志が掲げた永寿総合病院を応援する横断幕

 入院・退院患者107人、医療従事者ら73人、計180人の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)陽性者が確認された東京都の永寿総合病院(台東区)。感染対策の支援に入った厚生労働省クラスター班は4月15日、報告書を発表。その調査結果から、病棟休憩室、仮眠室、職員ロッカーなどでの医療従事者間の感染拡大、原疾患に紛れ込んだCOVID-19の症状を疑うタイミングの遅れ──など、院内感染につながった可能性のある幾つかの要因が浮かび上がった。

 永寿総合病院で入院患者2人にCOVID-19陽性が確認されたのが3月23日。その後も陽性者は増え続け、東京都のまとめでは4月13日までに、入院・退院患者107人、医療従事者ら73人の計180人に膨れ上がった。

 同病院は行政と協議し、厚生労働省クラスター班に感染対策の支援を要請。3月30日から支援に入っている厚生労働省クラスター班は4月15日、これまでの経過を報告した。

 まず院内感染の発生経緯だが、疫学曲線を見ると、集団感染の発生は3月14日ごろから始まっていた(図1)。当初から患者と医療従事者の両方から発症者が認められていたが、患者群と医療従事者群別に見ると、患者の集団発生から遅れて医療従事者の発症ピークが現れていた。

図1 永寿総合病院のCOVID-19報告例の推移(患者・医療従事者等別。n=174*人、2020年2月25日~4月9日。「永寿総合病院調査チーム支援報告」から)

 病棟別では発生当初はA、B病棟が中心であり、後半からはG病棟が主体という動きが確認された。これ以外の病棟からも散発例が出ているが、この点について報告書では「複数の病棟を行き来する医師らの医療従事者が伝播した可能性も考えられた」としている。

 発端者については、3月上旬にCOVID-19を発症したと考えられる2例で、いずれもA病棟の入院患者だった。原疾患の影響もあり発症日の判断が難しい、との前提ながら報告書は「この2例が起点となり、病棟内で他の患者や医療従事者を介する形で集団発生につながった可能性が示唆される」と結論している。

 院内での感染拡大要因としては、以下の3点に分けて推定している。

1 全体に共通する要因
・密に過ごす空間(病棟休憩室、仮眠室、職員食堂、職員ロッカーなど)での医療従事者間での感染拡大の可能性
・原疾患やその治療に伴う症状もあり、COVID-19を疑うタイミングが遅れた可能性
2 病棟内の感染拡大の要因
・基本的な感染予防策(手指衛生など)が不十分になる場面があったこと
・認知症などで動き回る患者が存在したこと
・化学療法中など易感染性患者が存在したこと
3 病棟間の感染拡大の要因
・病棟の構造上の問題(隣接病棟と一体化した構造だった)
・患者の転棟による拡大
・病棟間を移動する医療従事者が媒介した可能性

 感染対策としては、3月30日時点で、複数の病棟にPCR陽性患者と陰性患者が混在していた。このため支援チームは、病棟内での隔離は行われているものの、感染対策上ウイルス伝播のリスクが高い状態と判断し、PCR陽性者と陰性者を病棟単位で分けるコホート対応に移行。4月9日からこの新たな感染対策に全面的に移行している。

 今後については、入院患者から散発的に陽性例が生じ得るとし、COVID-19を疑った時点での隔離と診断を進め院内での伝播を断っていく方針と結んでいる。また、感染拡大の要因には未解明の点も多いことから、さらに調査を進めるとしている。

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