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寄稿◎重症患者に対する医療機器不足を打開する
3Dプリンターでできる簡易人工呼吸器を世界へ

2020/03/30
石北直之(国立病院機構新潟病院 臨床研究部医療機器イノベーション研究室)

 新型コロナウイルスの猛威は世界中で拡大の一途をたどり、収束の気配は一向に見いだせない状況です。イタリア、スペインでは累計の死者数が中国で報告されている死者数を上回り、世界中で今もなお増え続けています。世界中の医師が患者を救うために身を粉にして働いていますが、爆発的感染が起こってしまった地域では、圧倒的に重症患者に対する医療機器が不足している事態であることは、報道でもご覧になったことがあると思います。

 この状況を何とかしたい、少しでも多くの人を助けるための手助けをしたい、と思い、私が取り組みを始めているのが、3Dプリンターで作成できる簡易人工呼吸器(写真1)の実用化です。実用化といっても既に確立した技術を応用するものであり、パーツ(写真2)を3Dプリンターで作成することは現時点でも可能です。しかし、完成品を世界各地の現場に届ける術は既に失われているため、3Dプリンティングのためのデータを無償で提供することによって世界中で使っていただくための準備を整えました。ただし、簡易型とはいえ医療機器になりますので、臨床で実用化するためにはいくつかのハードルがあります。

写真1 3Dプリンターで製作した簡易人工呼吸器の実装イメージ

写真2 3Dプリンターで作成したパーツ

 この記事では、プロジェクトを立ち上げるに至った経緯、そしてプロジェクトの内容についてお伝えし、ご賛同いただける方にご協力をお願いしたいと思っています。なお、この取り組みは、広島大学トランスレーショナルリサーチセンター准教授の木阪智彦氏のご協力を得て、プロジェクト(名称:COVIDVENTILATOR PROJECT)としてスタートを切っています(表1)。

表1 COVIDVENTILATOR PROJECTの概要

■本デバイスの主なコンセプト
・一定の性能要件を満たす汎用3Dプリンターとネットワーク環境があり、3Dプリンター原料のABS樹脂があれば世界のどこででも人工呼吸器を製造可能(現時点では、認証されていないモデルデータのみ提供可能であり、医療機器としては未認証の状態)。
・医療機器の備蓄が限定される宇宙空間をはじめとしたいかなる場所においても、3Dプリンターさえあれば、必要に応じて迅速に製造できる概念で設計されている。
・圧搾空気を通常の動力源とするため、電気が使えない状況下で動作できる。手動でも動作可能1*。
・先行発明の簡易吸入麻酔アタッチメント「嗅ぎ注射器」(WO2012165541A1)を翻案しており。ミニマムな仕様の人工呼吸器コンセプトを実現。
・医療機器製造販売業の認可を持つ株式会社ニュートン(岩手県八幡平市)と共同開発したため、実用化研究が終了し医療機器認証(日本ではPMDA/厚生労働省)が得られ次第、実際の機器として製造販売が可能となる見込み。
*1人工呼吸器として動作する際の、必要エネルギーソースについて
 ・現在の研究で使用している成人1名用のポンプは23Wで駆動し、吐出量は約25L/分。
 ・病院の中央配管システムのコンプレッサーは1.5K~22KW相当であり、十分に駆動力としてまかなえる。
※コンプレッサー配管が無い場合は、圧搾空気または酸素ボンベ、バッグを手動でもみ供給された空気圧で動作可能。キャンプ用品のフットポンプでも代用可能(2つつなげてステップを踏めば、空気の連続供給が可能)。

■現在、モデルの公開試験中(ライブ配信)
 このモデルは現在、長時間耐久テスト中であり、その様子をYouTube及びニコニコ動画で公開*2しています。
*2このモデルを使った長時間耐久テストの動画
YouTube
ニコニコ動画

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連載の紹介

シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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