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Emerging Microbes & Infections誌から
SARS-CoV-2は糞口感染する可能性あり
口腔スワブでは陰性なのに肛門スワブが陽性の患者も

 中国科学院Center for Biosafety Mega-ScienceのWei Zhang氏らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者の消化管にもウイルスが存在するかどうかを明らかにする必要があると考え、武漢市内の1病院で患者から採取した標本を検査したところ、ウイルスは患者の肛門スワブと全血標本にも存在しており、糞口経路で感染が広がる可能性があると報告した。結果はEmerging Microbes & Infections誌電子版に2020年2月17日に掲載された。

 現在のところ、SARS-CoV-2感染者の検出と管理には、主に口腔咽頭スワブPCR検査が用いられている。24時間間隔で2度陰性になった患者はウイルスが排除されたと見なされている。

 研究者たちは先に、ウイルスのスパイクの遺伝子を検出するPCR検査を開発した。また、SARS-CoV-2のヌクレオカプシド蛋白質(NP)と相同性が高い、コウモリのSARS様ウイルス由来のNPを用いて、SARS-CoV-2に対するIgMとIgGを検出する方法を開発した。

 今回著者らは、武漢の1病院に入院した新型肺炎患者から、口腔スワブ、肛門スワブ、血液標本を収集し、それらの方法を適用した。この論文では、ウイルスの核酸が検出された患者のみについて報告している。

 まず、入院時の口腔スワブにおいてウイルス陽性と判断され、治療を受けていた15人の患者を対象に、口腔スワブと同様に、肛門スワブと血液標本からもウイルスが検出できるかどうかを検討した。標本からRNAを抽出し、PCRを行ってウイルスのスパイク遺伝子を検出したところ、8人(53.3%)は口腔スワブ陽性、4人(26.7)は肛門スワブ陽性、6人(40%)は全血標本陽性、3人(20%)は血清陽性だった。

 2人の患者で、口腔スワブと肛門スワブの両方が陽性になったが、全血陽性者の中に、いずれかのスワブが陽性になった患者はいなかった。また、血清陽性者は全員が、全血標本も陽性だった。これは、口腔スワブ陰性患者においても、ウイルス核酸が、肛門スワブまたは血液から検出される可能があることを示唆した。また、両スワブ陰性であっても、血中にウイルスが存在する可能性が示唆された。

 続いて著者らは、別の16人の患者を対象に、標本中のウイルス量と、血清中のウイルス抗体価の経時的な変化を調べた。対象となった患者は、入院して約10日間治療を受けていた。IgMとIgGの力価は、初回標本採取日(day 0)には低かった。しかし5日目(day 5)には、ほぼ全ての患者が抗体陽性になった。IgM陽性率は、50%(16人中8人)から81%(16人中13人)に、IgG陽性率は81%(16人中13人)から100%(16人中16人)に上昇していた。

 一方、PCR検査では、day 0における口腔スワブ陽性は16人中8人(50%)、肛門スワブ陽性は16人中4人(25%)で、両方とも陽性だった患者が2人いた。day 5の口腔スワブ陽性は16人中4人(25%)、肛門スワブ陽性は16人中6人(37.5%)で、どちらも陽性が2人いたが、day 0における両スワブ陽性者との重複はなかった。これらのデータは、感染から比較的早い段階では口腔スワブが陽性になるが、その後に肛門スワブが陽性になる患者が多いことを示唆した。

 著者らは、現在診断に用いられている口腔スワブベースのPCRによるウイルスRNA検出法は完全ではないことを示した。口腔スワブが陰性になった後に、肛門スワブまたは全血がウイルス陽性になる患者もいた。また、全血がウイルス陽性だった患者は誰1人として、口腔スワブと肛門スワブが陽性にならなかった。こうした患者は、現行のサーベイランスでは陽性と判定されない。一方で血清中のウイルスに対する抗体はすべての患者に認められた。現在のように、口腔スワブが陰性になった患者を退院させると、引き続きウイルスが排出されて、糞口経路で感染が広がる可能性があることが示唆された。

 原題は「Molecular and serological investigation of 2019-nCoV infected patients: implication of multiple shedding routes」、全文がEmerging Microbes & Infections誌のウェブサイトで閲覧できる。

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