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〔08 Autumn〕 提供:大鵬薬品工業株式会社
日本乳癌学会学術総会会長座談会
今日の乳がん治療の課題と展望─第16回日本乳癌学会学術総会への期待

2008/09/16
日経メディカルCancer Review

ノン・アントラサイクリン系薬剤へレジメンは移行しつつある

園尾 次に、乳がん化学療法の現状と課題について考えたいと思います。術後補助化学療法にはどのような変化が見られますか。

稲治 アントラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤が依然として中心的な薬剤ですが、トラスツズマブの上市を契機に、ノン・アントラサイクリン系薬剤のレジメンとしてTC 療法なども普及しつつあります。私たちも基本的なレジメンは、St.Gallenのコンセンサス(表1)に準じていますが、リスク分類(表2)と選択薬の線引きについては少し微妙です。特に中間リスクは非常に幅が広いので、アントラサイクリン系薬剤単独か、タキサン系薬剤との併用かなどについては、一律には決められません。

池田 タキサン系薬剤が開発され、20年来標準的に使われてきたアントラサイクリン系薬剤の心毒性などの副作用がより意識されるようになりました。また、支持療法薬剤の種類も増え、タキサン系薬剤による骨髄抑制もG-CSF でかなりカバーできますから、アントラサイクリン系薬剤を除いたレジメンによるトライアルも増えています。それらの成績も悪くないので、ノン・アントラサイクリン系薬剤への移行が始まりつつあると私は見ています。

園尾 最近はリスク分類による治療アルゴリズムだけでなく、ER(エストロゲン受容体)、PgR(プロゲステロン受容体)、HER2(ヒト上皮細胞成長因子受容体2)などを指標に治療効果を予測できるようになりました。また、細胞内にDNAトポイソメラーゼⅡαが一定量発現していればアントラサイクリン系薬剤が有効であるが、発現が弱ければ他剤を選択するといった方法も考えられています。遺伝子レベルによる個別化がより確実になれば、心毒性をもつアントラサイクリン系薬剤によらないレジメンが今後さらに増えると考えられます。そうした中で、経口フッ化ピリミジン系製剤の位置付けをどのようにお考えですか。

池田 わが国独自の検討であるA C E T B C(A d j u v a n t C h e r m o -endocrine Therapy for Breast Cancer)や、昨年のASCO(米国臨床腫瘍学会)で報告されたN・SAS-BC 01試験のデータ(図1)によれば、UFTは少なくとも標準レジメンであるCMF(シクロホスファミド/メトトレキサート/5-FU)療法に対しては非劣性の成績を示しています。したがって、脱毛を避けたい症例や高齢者など、特定の対象には有用だと思います。また、UFT+TAM(タモキシフェン)療法とCMF+TAM療法を比較したCUBC 研究のサブセット解析(次ページ、図2〜5)では、UFT+TAM 療法はER 陽性群に対して著明な効果を示しています。したがって、通常の化学療法の上乗せ効果が少ないとされるER陽性乳がんにおいても、UFTは異なる特性を示すと考えられます。

園尾 今年のASCOでは、65歳以上の高齢者を対象にした標準治療のCMF/AC 療法と経口フッ化ピリミジンのカペシタビンとの比較試験(CALGB/CTSU49907)も発表されました。その治療成績としての全生存期間では、良好な結果がでなかったようですが、これをどのようにお考えですか。

稲治 経口フッ化ピリミジン系製剤は、正常細胞への影響を考慮して規則正しく長期的に投与(metronomicchemotherapy)されるべき治療薬です。ところが、ASCOで発表されたそのデータはわずか5カ月の投与ですから、それがカペシタビンの適切な評価であるのか議論の余地はあると思います。

園尾 TS-1も新しい経口フッ化ピリミジン系製剤ですが、どのような印象ですか。

池田 TS-1はかなり強力なバイオケミカル・モデュレーションを利用した薬剤であり、良好な有効性が期待されます。少なくともUFT以上の成績を示すのではないかと考えています。ただ、TS-1をアジュバントとして用いたエビデンスがないので、現状で評価するのは時期尚早かと思います。また、UFT、カペシタビン、TS-1はかなり副作用のプロファイルが違います。私の経験では、TS-1はUFTなどより骨髄抑制が強い印象があ
りますから、ある程度使い慣れる必要があるかもしれません。

稲治 TS-1は、タキサン系薬剤との比較試験であるSELECT BC試験(次ページ、図6)で良い結果を示せば、アジュバントとしての適応が評価されることを期待しています。

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