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〔08 Autumn〕 提供:大鵬薬品工業株式会社
日本乳癌学会学術総会会長座談会
今日の乳がん治療の課題と展望─第16回日本乳癌学会学術総会への期待

2008/09/16
日経メディカルCancer Review

日本乳癌学会理事長
園尾博司先生
川崎医科大学
乳腺甲状腺外科学教授

超音波検査による40 歳代の検診を

園尾 2007年4月に施行された「がん対策基本法」について話題を進めます。同法の基本施策は、がんの予防と早期発見、がん医療の均てん化、がん研究の推進の3つです。予防と早期発見について言えば、わが国のがん検診の受診率は平均17%と非常に低く、特に乳がん検診の受診率はここ10 年間くらい12 %程度で推移しているという状況です。厚生労働省は、75歳未満のがん死亡率を10 年以内に20 %減少させ、乳がん検診の受診率を5 年以内に50 %以上に向上させると公表しています。各自治体も「がん対策基本法」の施行を受けて、乳がん検診の啓発活動を活発化させており、例えば岡山県などは保健師の研修や活動支援を強化して成果を上げようとしています。一方、東京都や大阪府などの大都市の受診率は非常に低い状況にあります。

第15 回日本乳癌学会
学術総会会長
池田 正先生
帝京大学医学部外科学教授

池田 「がん対策基本法」は、医療者、行政、そして患者さんが、それぞれの立場で果たすべき責務を明記した概念法ですから、実施すべき具体的内容が指示されているわけではありません。ですから、啓発活動の実施や保健所の相談窓口の設置など、実際の取り組みは各自治体が独自に行っています。東京の受診率が全国平均より低いという指摘は、あくまでも行政が把握している数字による評価です。そこには各職域で実施されている検診状況が反映されていないという要素もありますが、受診率の向上は大きな課題です。

園尾 確かに、企業の検診は義務化されていないため、受診者数が公式には把握されていません。より正確な数値を把握するためには、企業の検診状況の報告義務もつくる必要がありますね。大阪は、いかがですか。


稲治 大阪府もワースト5に入っており、受診率は8 %台です。大阪府の財政が逼迫していて積極的な対策を講じられないことも要因の1つです。ただ、そうした状況は他県でもあるはずですから、受診率を云々するより対象を絞ることも重要ではないかと思います。日本人女性の乳がん発症率は40 代にピークがあるので、40 代の検診を強化することも1つの方策です。そういう意味では、40 代の乳がん検診における超音波検査の有用性を検証するJ-START試験が開始されたことは、非常に意義深いことと感じています。


園尾 マンモグラフィ検診は50 歳以上であれば乳がんの約9 割が診断できますが、40 歳代の乳がんの3 割は見落とされるといわれます。40歳代の乳がん検診として「超音波検査をマンモグラフィに加える意義」を検証するJ-START 試験の成果に期待したいと思います。
 「がん対策基本法」には、がん医療の均てん化の推進も盛り込まれました。その背景には、がんの標準的治療が全国一律に受けられないという患者団体の声があります。具体的には、専門医や緩和医療の不足と偏在が指摘されています。

池田 乳がん領域では、格差は比較的少ないように思います。明確なガイドラインが早くから提示されてきましたし、乳がんの情報も非常に豊富で、地方でもインターネットなどで都市部と変わらぬ情報を得られます。また、昨年の学会で資料をまとめたところ、人口当たりの専門医数もそれほど偏在していないことがわかりました。ただし、面積当たりの専門医数は地方で少ないので、近隣で専門医を探すことができない状況もあることは事実です。

稲治 地方では、高度医療施設を中心とする地域連携パスを作成するなどして、地域だけで完結できる体制を構築すべきだと思います。

園尾 放射線治療は一定期間毎日受ける必要があるので、近隣にそうした施設がなければ、遠隔地での長期入院を強いられます。やはり財源を手当てして、過疎地域の病院の治療設備を増強し、拠点病院から専門医を派遣するなどの対策を講じる必要がありますね。

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