日経メディカル Cancer Review

2008/9/16

〔08 Autumn〕 提供:大鵬薬品工業株式会社

日本乳癌学会学術総会会長座談会

今日の乳がん治療の課題と展望─第16回日本乳癌学会学術総会への期待


乳がん患者のリスクには個人差があり、それを適切に把握し、適切な治療法を選択することが重要なテーマになっている。検診に加え、化学療法や放射線治療にも個別化の可能性を追求する動きが加速化している。第16 回日本乳癌学会学術総会では乳がん医療の個別化に焦点があてられる。本座談会では、最近の化学療法のトピックスなどを踏まえつつ、個別化医療の可能性を含め、今日の乳がん治療の課題と展望を、日本乳癌学会理事長の園尾博司先生、第15 回日本乳癌学会学術総会会長の池田正先生、第16 回学術総会会長の稲治英生先生に語り合っていただいた。


乳がん治療は標準化から個別化へ

園尾 今回は、日本乳癌学会の昨年度の学術総会会長を務められた池田正先生と、本年度の会長を務められる稲治英生先生に、「今日の乳がん治療の課題と展望」をテーマにお話しいただきます。日本乳癌学会は今年で設立16周年を迎えますが、15 年の節目であった昨年の学術総会は「総合力による乳がんの克服」がテーマでした。まず池田先生にその成果をご報告いただきたいと思います。

池田 テーマに用いた総合力という言葉には、単なるチーム医療ではなく、集学的治療でもないより広い概念を想定しています。乳がんの死亡率および罹患率は、欧米では減少傾向にあるのに対し、わが国では今も増え続けています。そこで、職種や地域、様々な学問の枠を超えた総合力による治療体制の再構築が必要だと考えました。

そうした意味合いから、前回の学術総会では江崎玲於奈博士に特別講演をお願いするとともに、外国の研究者の演題も拡充し、領域や地域を超えた総合力という視点を盛り込むことに注力しました。さらに、異なる職種の連携強化も見据え、コメディカルや患者さんにもシンポジストとして意見を述べていただきました。参加者は5,000 名を超え、盛会のうちに幕を閉じることができました。


園尾 確かに、患者さんやコメディカルの意見を反映することはたいへん重要だと思います。それでは、本年度の学術総会のテーマについてご説明いただけますか。

稲治 今年のテーマは「標準化から個別化へ」です。乳がん領域では診療ガイドラインも早期に整備され、医療の均てん化にも拍車がかかり、治療の標準化はかなり達成されたと考えています。そこで、今後の課題は個別化ではないかという信念からこのテーマを選びました。具体的には検診、診断、および各種治療モダリティにおける個別化を重点的に取り上げます。例えば、検診であればリスク評価に応じた個別化検診の実現、薬物療法であれば最新のマイクロアレイ技術等による個別化の可能性を追求したいと考えています。また放射線療法も、乳房を温存した症例すべてに漫然と行うのではなく、リスク評価を基に、放射線療法の必要性を個別に判定すべきことを論じていただきたいと考えています。

園尾 薬物療法の標準化は、St.Gallen(ザンクトガレン)コンセンサス会議で提示される治療指針(表1、2)などに準じて進められてきました。しかし、稲治先生が言われるように、ガイドラインやエビデンスが十分に意識される状況に発展してきたので、今後は個別化へ向かう必要があると考えられます。本年のテーマはまさに時を得たものと思いますので、楽しみにしています。

(次ページに続く)
(日経メディカルCancer Review)
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