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特集 [08 Summer]
学会リポート2・第6回日本臨床腫瘍学会学術集会より

2008/06/19
日経メディカルCancer Review

②ソラフェニブ
投与早期に膵酵素が上昇、有効性と相関はなく人種差も不明

 

国内で行われたソラフェニブの進行性腎細胞がんに対する第II相試験から膵酵素上昇に注目した発表があった。この試験では、奏効率15%、80%の症例で腫瘍縮小傾向が観察され、PFSは224日で、欧米で行われたTARGET試験の167日と同等の成績が得られている。筑波大学大学院教授の兵藤一之介氏は、TARGET試験ではごく低頻度であった膵酵素上昇が、国内第II相試験において高頻度に発現したことに着目、発症時期と経過、有効性との相関を検討し報告した。
 
膵酵素上昇は、対象131例中78例(59.5%)で上昇がみられ、grade 3以上はリパーゼ上昇が40例(30.5%)、アミラーゼ上昇7例(5.3%)であった。リパーゼ上昇は65例(50.0%)が、アミラーゼ上昇は44例(34%)がいずれも治療開始3週間以内に生じていた。大部分の症例でソラフェニブ投与継続のまま1~2ヵ月で改善あるいは正常化、休薬・減量は3例(2.3%)、薬物治療を必要としたのは2例(1.5%)であり、画像検査上膵炎様所見もみられないとした。

PFSでみた有用性との相関については、リパーゼの上昇群と非常症群が274日対201日(ハザード比0.643:95%信頼区間0.396-1.047)、アミラーゼでは同様に241日対217日(ハザード比0.803:95%信頼区間0.484-1.333)で有意差はなく、年齢、性別、PS(全身状態)、Motzerスコアとの関連、他の副作用の発現とも相関しなかったという。機序は不明であり、諸外国の報告に比べ本邦で報告の多い理由は検査頻度にある可能性を指摘し、人種差については不明とした。
 
コメンテータの国立がんセンター中央病院の田村研治氏は、ソラフェニブと同じVEGFR-TKI(VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤)であるスニチニブにも膵酵素上昇例の報告があるとし、その機序の追究が効果予測に繋がる可能性を指摘した。


③ペメトレキセド
薬剤性間質性肺炎の発症頻度は1~3%?~市販後全例調査中間解析結果から

 
ゲフィチニブ(商品名:「イレッサ」)では間質性肺炎の出現が大きな問題となり、肺がんに用いられる分子標的治療薬の薬剤性間質性肺炎が注目され、ペメトレキセドでは市販後全例調査が実施された。国立がんセンター中央病院の加藤晃史氏は、本調査につき中間報告を行った。
 

本調査ではアドバイザリーボードを設け、評価基準を規定、迅速な評価を行うとともに報告者に対する十分な資料請求を可能とした。2008年3月14日の時点で361施設から749症例が登録された。間質性肺炎の発現と診断された6症例のうち、アドバイザリーボードがペメトレキセドによる薬剤性間質性肺炎と判定した3例について詳細を報告した。
 
全例が石綿暴露、喫煙歴有りで、診断時には37℃台の発熱と低酸素血症、スリガラス状陰影を認め、KL-6は700台に上昇していた。発症の時期は、2例が1コース目、1例は5コース目終了後40日を経ていた。加藤氏は、検討結果から胸部CT評価が早期発見に寄与する可能性が示唆されるとした。
 
コメンテータの岡山大学大学院血液・腫瘍・呼吸器内科の木浦勝行氏は、薬剤性間質性肺炎の診断、治療はともに現時点では非常に困難とした上で、発現頻度は3%に迫る可能性もあり、ペメトレキセド投与例の注意深い観察が重要と指摘した。

④ゲフィチニブ
EGFR 遺伝子変異があれば、抗がん剤治療 非適応PS 不良非小細胞肺がんにも有効


 北東日本ゲフィチニブ研究グループの前門戸任氏は、ゲフィチニブは分子標的治療薬であること、EGFR(上皮細胞増殖因子受容体)遺伝子変異がある症例により高い効果を示すことから、従来の殺細胞薬による化学療法が適用できないPS不良な非小細胞肺がんであってもEGFR遺伝子変異があれば投与可能であると考えたと本研究の背景を解説した。
 
現状では、支持療法のみの施行となるPS不良例の予後は3~4ヵ月とされることから予測予後4ヵ月以下の症例を選択し、PNA-LNA PCR clamp法によりEGFR遺伝子陽性と判定した症例30例を検討対象とした。主要評価項目は、ゲフィチニブ250mg/日の奏効率、副次評価項目はPSの改善、副作用、生存期間である。検討の結果、解析対象29例中CR 1例、PR18例で奏効率は65.5%、SD7例でPDは2例であった。副次評価項目としたPSの改善は、3および4から1および2への移行率が79%を示した。間質性肺炎の発現が懸念されたが、肺臓炎の1例のみで、他の有害事象プロファイルに特異なものはなかった。PFSが9.3ヵ月、生存期間は17.8ヵ月であった。
 
前門戸氏はEGFR遺伝子変異を有するPS不良非小細胞肺がんに対しては、ゲフィチニブによる治療が有益である可能性が示唆されたとした。
 
コメンテータの北海道大学大学院腫瘍内科学教授の秋田弘俊氏は、本研究により患者選択におけるEGFR遺伝子変異検索の妥当性がPS不良患者についても示され、その意義は大きいと評価した。

⑤ UFT+アンドロゲン遮断療法 化学療法とMAB療法の併用は進行前立腺がんの予後を改善し得るか
 
岐阜大学大学院泌尿器科分野教授の高橋義人氏は、進行前立腺がんの標準治療であるアンドロゲン遮断療法(Maximum Androgen Blockade、MAB)療法にUFTを併用することの意義を検討し報告した。

 対象は、PS 3以下の臨床病期D2進行未治療前立腺がん症例で、異時性および同時性の他臓器がん例と重篤な臓器障害例は除外されている。登録した154例を、ビカルタミドによるMAB単独療法群に78例、MAB療法+UFT併用群に76例無作為割付けした。評価項目はPFS、全生存期間(OS)、安全性である。

 成績は、併用群の1年PFSが75.3%、2年PFSは50.7%であったのに対し、単独群はそれぞれ73.9%、54.5%で、両群間に差はなかった。OSにおいても、併用群の1年OSは 92.2%、2年OSは 75.5%であったのに対し、単独群はそれぞれ96.0%、83.6%であり、やはり両群間に差はなかった。化学療法が奏効しやすいとされる低分化症
例のみの層別解析でも同様の結果であった。

安全性については、併用群において消化器症状、日光過敏症、貧血、めまいなどの有害事象の発現頻度が高い傾向にあり、治療中止率が37.3%とMAB単独群の18.2%に比べ高率であった。

 コメンテータの和歌山県立医科大学医学部泌尿器科の原勲氏は、進行前立腺がんに対する標準治療は内分泌療法であり、化学療法剤についての有効性を証明した大規模試験はないとし、目下検討中のドセタキセル、あるいは分子標的治療薬の可能性に注目しているとした。

⑥ 有痛性骨転移の治療
放射線照射は8Gy1回照射も有望

 
今日、日本国内では有痛性骨転移に対する放射線治療は30Gy/10回、あるいは24Gy/6回などの分割照射が主流である。それに対し国立がんセンター中央病院放射線治療部の伊藤芳紀氏は、欧米における大規模無作為化比較試験により8Gy 1回照射の分割投与に対する同等性が証明されているとし、対象患者が年々増加する状況において、患者と医療者双方に時間的経済的利点が大きいことも含め、国内における8Gy 1回投与の可能性について、多施設共同前向き試験により検討することとしたとその背景を説明した。

 疼痛評価は国際的コンセンサスに準拠し患者側の評価とし、鎮痛薬の使用状況も経口モルヒネ換算し評価に反映するといった工夫を行っている。また、有害事象は早期に発現するものと遅発性のものを、それぞれに応じた基準で評価した。

 検討対象には14施設から100例が登録され、評価対象97例に対する8Gy 1回照射による鎮痛効果は、CRが40例(41.2%)、PRが44例(45.4%)、疼痛緩和割合は86.6%であった。鎮痛薬の使用を加味した疼痛緩和割合は72.2%であった。伊藤氏は、有痛性骨転移に対する8Gy 1回照射は、有効かつ安全に施行でき、日常臨床における選択肢のひとつとなり得ると結論づけた。
 
コメンテータの帝京大学医学部内科学講座腫瘍内科教授の江口研二氏は、伊藤氏の示した8Gy 一回投与の有用性と波及効果を認めた上で、IMARTやCyber knifeなどの手技が検討されていない点と、奏効度評価基準における疼痛スコア低下幅や鎮痛薬の影響度評価法の問題を指摘した。さらに、本検討の結論が一般化されるには、転移部位やその数、疼痛強度、再照射開始基準、鎮痛機序を考慮した試験デザインによる第II/III相試験が必要とした。

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