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対談 [08 Summer]
消化器がん治療を展望する 日本はどこまで世界に寄与できるか

2008/06/18
日経メディカルCancer Review

化学療法と分子標的治療薬との併用

吉田 1st line治療では、IFLに対するFOLFOXの優越性が示されたのち、分子標的治療薬を導入したFOLFOX/BVに期待が集まりましたが、思ったほどの効果は得られていないようですね。考えてみると、分子標的治療薬との併用で有効性が確認された最初の化学療法はIFLですし、BOND試験はCPT-11とC225の併用レジメンを検討しています。本格的にL-OHPと分子標的治療薬の併用が検討されたのはNO16966ですね。

瀧内 2,000例以上の進行結腸・直腸がんを対象としたfactorial designの国際的第III相試験であるNO16966(FOLFOX/プラセボ、XELOX/プラセボ、FOLFOX/BV、XELOX/BV)の成績をみると、FOLFOXに対するBVの上乗せ効果はさほど大きくない印象です。本当はもっと大きな上乗せ効果があるはずなのに、L-OHPの末梢神経毒性などで減量や投与中止が起きて相殺されていると推察されます。
そのため、PFSは想像していたほどの差が開かない。OSも変わりないという結果となりました。

吉田 L-OHPを1st line治療に使用する戦略を疑問視する声も出始めているようですね。

瀧内 米国では、以前は1st line治療の6~7割にFOLFOXが使用されていましたが、最近では徐々にFOLFIRIへ移行しつつあるようです。日本でも、FOLFOXの使用経験が蓄積されて、「1st line治療にはFOLFIRIのほうがよいのではないか」という意見が聞こえ始めています。第II相試験では、FOLFOX/BVに比べFOLFIRI/BVにおいてPFSが約2か月延長しており、そのような声を裏付ける結果となっています。


多剤併用戦略の限界

吉田 現在、ものすごい勢いで分子標的治療薬の開発が進められていますが、今後はどのような展開が考えられるでしょう。このまま上乗せ戦略を続けて多剤併用を進めるにも限界があると思います。逆に、レジメンを単純化して、蓄積毒性が少なくて長期に使用できる治療法を開発するという方向性は考えられますかね。

瀧内 最初から複数の分子標的治療薬を併用したり、複数の化学療法薬と複数の分子標的治療薬を併用するという発想はあり得ると思いますが、それ以上の多剤併用戦略は限界に達しているとの印象があります。
 
ベースとなる化学療法薬はやはり5-FU系薬剤、CPT-11、L-OHPであり、そこにBVを上乗せし、可能であればさらにC225を上乗せするという戦略が進められるでしょう。

補助療法の意義について

吉田腸・直腸がんに対する補助療法の有用性を示すエビデンスが次々と提出されていますね。


瀧内 直腸がんの補助療法については、米国ではOSの延長を裏付けるデータがないにもかかわらず放射線療法が積極的に導入されています。
 
日本では、自律神経を温存する側方郭清を導入した拡大手術が行われます。直腸がんの術後補助化学療法のエビデンスとしては、N-SAS-CCの術後UFTの1年間投与があるのみです。

吉田 欧米では、直腸がんだけでなく結腸がんの術後にもFOLFOXを使用するようですが、毒性を考慮すればUFTで十分とも考えられますが。

瀧内私は、UFTあるいはUFT/LVを施行しています。本当に、術後に毒性の強い化学療法を行ってよいのかという疑問があります。この領域は、単純に海外のデータを外挿するわけにはいかず、自国のデータの蓄積がきわめて重要といえます。



日本における臨床腫瘍学の発展のために

吉田 最後に、これから臨床腫瘍学を目指す日本の若い医師たちに向け、メッセージをお願いします。

瀧内 胃がんの領域については、日本の進んできた道が正しかったことが証明され、今後世界のリーダーシップを取る位置を占めたと考えます。世界を主導する研究が可能ですから、ぜひ若い医師たちに積極的に参入するよう呼びかけたいと思います。韓国との連携をはじめ東アジアの共同研究の基盤づくりもこれからの重要課題です(6ページに関連記事)。

また、胃がんに限らず、食道がん、結腸・直腸がんも日本人に多い腫瘍ですから、この領域を世界レベルに押し上げることを目標に、若い力が結集されることを期待したいと思います。

吉田 本日は有意義なお話をありがとうございました。

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