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[08 Spring]
連載| D P C への移行はがん医療をどう変えるか第5回肝がんの血管塞栓術診療科による治療内容の違い

2008/06/18
日経メディカルCancer Review

次に注射を検証してみよう。図3のレーダーチャートからA病院の外科と内科では注射項目の資源投下状況に違いがあることが読み取れたが、注射投与状況について2つの診療科を比較してみよう。表1は、A病院の外科と内科の肝がん塞栓術で、術日以降に使われた薬剤で投与率の高いトップ5の使用状況(投与率、金額、使用日数)を示している。

投与率が一番高かった注射薬剤は両診療科ともに肝機能改善薬である強力ネオミノファーゲンシーであり、次にソリタや生食などの輸液製剤と続いた。強力ネオミノファーゲンシーの投与率には内科と外科で差異が見られ
た。内科での強力ネオミノファーゲンシーの投与率は72.1%であったが、外科では100.0%であった。(他病院との比較では図5が示すようにA病院の内科、外科共に、強力ネオミノファーゲンシーの投与率が高い事が示された)。

また投与日数の分布を見てみると、3日投与が徹底されている外科に比べて、内科は投与日数にかなりのバラツキも見られた。感染予防の為の抗生剤の使用ではどうだろうか?外科と内科の間に差異は見られるであろうか。A病院の内科では術後に抗生剤を感染症の予防投与で使用する率は16.4%なのに対して、外科では100%と大きな差が見られた(全病院の平均投与率は79.7%)。

また予防投与の日数では、内科は術日のみ(1日)の投与が多く、外科では2日間投与症例が多かった(全病院サンプルでは3日)。図6はA病院の外科と内科、そして他病院で肝がん血管塞栓術の感染症予防投与で用いられる抗生剤を比較してみたものである。投与薬剤については、セファメジンでほぼ統一されている外科に比べて、内科ではバラツキが見られる。

まとめ

今回は肝がんの血管塞栓術におけるA病院の外科と内科を比較検討し、一つの病院内で同様な医療行為に対しても、診療科ごとに治療スタイルが異なることを示した。がん医療の均てん化に向けた取り組みは、院内の分析を行うことがスタートであり、診療科、また医師ごとの垣根を越えたクリティカルパスを作成することは身近なゴールでもある。

そのためには、自院分析に加え、他病院とのベンチマークを行い、各診療科の医師、看護師、コ・メディカル、事務部門等の関係部署を集めたミーティングを開催し、標準化・効率化ができるものは何か、ディスカッションを行うことが重要であろう。さて乳がん、肺がん、肝がんと3回にわたり、ドライな分析を続けてきた。次回は少し趣向を変えて、DPC環境下のがん医療に関して、もう少し政策的な観点を盛り込み、問題提起を行いたいと考えている。


執筆者とグローバルヘルス・コンサルティングの紹介GHCは、米国カリフォルニア州アサートン市に本拠を構える急性期医療に特化したコンサルティング会社。もともとは米国の財団法人であるグローバルヘルス財団が外部からのコンサルティングの要請に対応するために作られた組織であり、米国の大学院の研究室のような雰囲気の中、実証分析をベースにした戦略的病院コンサルティングを行っている。日本においてはGHCジャパンを設立し活動している。ホームページ(http://www.ghc-j.com)からはブログで日々のコンサル活動を、また今までにGHCのスタッフが執筆してきたエッセーや論文などがダウンロードできる。連載の執筆はグローバルヘルス財団理事長アキよしかわとGHCジャパン社長の渡辺幸子に加えて、「がん研究班」の塚越篤子、相馬理人、濱野慎一の3名が行う。塚越はナース、助産婦として豊かな経験を持ち、相馬は歯科口腔外科医の前歴を持ち、濱野は理学博士としてデータマイニングの専門家。

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