日経メディカル Cancer Review

2008/6/18

[08 Spring]

連載| D P C への移行はがん医療をどう変えるか第5回肝がんの血管塞栓術診療科による治療内容の違い


前回の連載4では肺がん、前々回の連載3では乳がんに関する病院間比較を行った。今回は肝がんを取り上げる。
グローバルヘルス・コンサルティング 渡辺幸子、塚越篤子、相馬理人、濱野慎一、アキよしかわ



肝がんの血管塞栓術

肝がんに対する血管内治療としては、TAE(肝動脈塞栓療法)や、原発性肝がんに加え胃がん、大腸がん、乳がんなどからの転移性肝がんに対しも試みられる肝動注化学療法(リザーバー付カテーテルを鎖骨下動脈や大腿動脈の枝から肝動脈に挿入し、皮下に埋め込まれたリザーバーから抗がん剤を持続または間欠的に注入する治療法)や門注化学療法(カテーテルを腸間膜静脈の枝から門脈に挿入し、抗がん剤を注入する治療法)などがある。

今回はその中でも肝動脈塞栓療法を事例として取り上げる。肝臓がんの治療として行われている血管塞栓術とは、簡単に表現するなら、がんを養う血管を塞いで兵糧攻めにしてがんの縮小や消失をはかる治療法である。分析対象はDPCコードが「060050xx9713xx:肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む。)

その他の手術あり手術・処置等1あり手術・処置等23あり」であり、かつ手術コード「K615:血管塞栓術」のある症例である。①死亡症例、②DPC対象外病棟への転棟症例、③在院日数が2カ月(60日)を超える症例、は対象から外し、該当症例が40以上あった48病院3,973症例を分析対象とした。

肝切除術とは異なり、血管塞栓術は内科、消化器科、外科など様々な標榜科で行われている。図1は、分析対象3,973症例の標榜科別の割合を示している。

A病院の事例

地方のがん診療連携拠点病院でもあるA病院の事例を見てみよう。A病院における肝がんでの血管塞栓術は内科と外科で行われている。年間症例数は200件以上で、比率では外科が約7割、内科が約3割である。

まずはA病院の外科症例と内科症例とを比較してみる。ただし、外科と内科において症例の病期分類(ステージ)に差異がある可能性がある。ステージに差異あれば、選択される治療内容や結果に違いが出ていることも否定できない。我々がこの連載で繰り返し述べているように、がん医療を実証的に分析するうえで最も重要なステージ情報の欠落はDPCにとって大きな痛手である。DPCが導入された当時には様式1の入力必須項目であったがんのステージ情報は、2006年4月のDPCの改定で入力必須項目から除外されてしまい、多くの病院では入力されなくなっている。

A病院も例外ではない。図2はA病院の内科と外科におけるステージ情報を示している。内科症例ではステージ情報がほぼ100%入力されているが、外科では70%ほどにとどまっている。ステージ情報の欠落という大きなハンディがあることを念頭に置いた上で読み進めていただきたい。

(次ページに続く)
(日経メディカルCancer Review)
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