日経メディカル Cancer Review

2008/6/18

コメンタリー [08 Summer]

重み増すがん診療所、薬剤師の役割 渡辺 亨 (浜松オンコロジーセンター長)


渡辺 亨 氏  

がん化学療法の実践の場が入院から通院・外来へと移行するにつれ、標準的な化学療法ができるがん診療所の重要性が増している。診療所で化学療法を行うためには十分なスタッフの配置が望まれることはいうまでもない。とりわけ、レジメンの管理に通じたがん専門薬剤師の需要は今後ますます高くなると予想される。がん診療所への就職は継続して高い専門性を活かすことができる最良の職場選択といえるだろう。


入院治療から外来治療へ
 
従来、がん医療は、手術、放射線療法、化学療法、そして終末期医療にわたり、ほとんどすべてが入院で行われてきたが、状況は大きく変化している。外科手術のための入院は、手術前1週間、手術後3週間、合計4週間というのが常識とされてきた。しかし、最近では、胃がん、肺がんなどの手術でも必要な検査はすべて外来で実施し、手術の前日に入院し、手術後、合併症などがなければ2週間以内に退院というのが一般的となっている。放射線治療は分割照射が原則であり、数週間にわたる通院照射が普及している。

がん化学療法は、20年ほど前まではすべてのがん、すべての患者が入院して行われていた。しかし、最近では、制吐剤や好中球減少時の発熱に対する抗生物質、G-CSF製剤などが効果的に使用できるため、化学療法も外来で実施するのが当たり前になってきている。また、仕事や、家庭生活を犠牲にしないで、発病前と同じような生活を送りながらがん治療を行うことは、QOLの維持という観点からも重要である。


病院医療から診療所医療へ
 
高精度な診断機器を用いた画像診断、高額な機器を用いた放射線照射、あるいは入院を必要とする外科手術などは、大規模拠点病院での実施が必要である。しかし、がん治療の時間経過を考えた場合、その大部分は、抗がん剤治療の継続、定期的な診察、がんあるいはがん治療に関する情報提供などにかかるものである。

そのために自宅から離れた“重厚長大”な拠点病院に通院する必要はない。
特にがん化学療法を、自宅近くの診療所で実施できれば、仕事をしている人にとっては、朝の出勤前、あるいは帰宅途上に、家庭の主婦ならば、昼間、夫や子供が不在の時間帯に治療を受けることができる。また、自宅近くの診療所にがん診療専門家が常駐していれば、ちょっとした心配ごとでも、通院時間、待ち時間も短く相談に行
くことができる。このように、化学療法を中心とした腫瘍内科的がん診療を行う上で、今や、診療所での実践が求められているのである。


街角がん診療:Oncology Clinic just around the Corner

 外来化学療法の急速な普及に象徴されるように、がん診療が入院医療から通院医療へと急速に移行している。このことは、腫瘍内科医が担う入院医療は、主として緩和医療~終末期医療といった、入院を余儀なくされる患者の医療に限定されていく。必然的に、腫瘍内科医の医療実践の場は、診療所に移行していくであろう。

現在、厚生労働省が進めているがん診療拠点病院整備は、あくまで過渡期的措置であり、その先には、病院からさらに拠点診療所ネットワークの整備が必要となってくる。これを一言でいうならば「街角がん診療」である。診療所における腫瘍内科医の具体的な診療活動としては、外来化学療法などの薬物療法の実践、初期治療後のフォローアップ、治療方針に関するセカンドオピニオンの提供、がんおよびがん治療に関する様々な相談、緩和医療の提供などである。
 

がん診療所においては、化学療法、ホルモン療法、抗体療法といった抗がん治療、抗がん治療に伴う副作用軽減のための支持療法薬、緩和医療にかかわる種々の薬剤など、薬物療法の実施が主要な診療行為となる。これには、腫瘍内科医のみならず、薬剤師、看護師といったコメディカルの参画が不可欠である。
 
腫瘍内科医は治療計画の策定、治療内容の説明、治療経過の監督といった基幹となる医療を行う。薬剤師は治療レジメンの策定、薬剤管理、調剤、薬剤情報提供といった薬剤業務を行う。看護師は治療計画に沿った治療の遂行、点滴の管理、治療内容の説明、患者の状態観察、治療経過の監視といった患者にかかわる業務を行う。

(次ページに続く)
(日経メディカルCancer Review)
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