PSA cut off 値ではなく 個人のPSA値変動に注目を
PSA 検査の普及が日本の前立腺がん死を減らしていくことは間違いないというのが泌尿器科医らの共通認識といえるだろう。しかし、PSA 検査には1つの"弱点"がある。cut off 値がはっきりしないのだ。国内の検診では通常、4.0ng/mlをcut off 値に設定している場合が多いが、1997年に米国でPSA≦4.0ng/mlの23%(73/322 人)に前立腺がんが発見されたと報告されて以来、国内外で"PSA低値がん"の報告が相次いでおり、cut off 値を引き下げるべきとの意見もある。
総会の教育講演で東芝林間病院(相模原市)泌尿器科医長の菅野ひとみ氏は、そうした絶対値にこだわるのでは
なく、経時的な変動に注目するべきと指摘している。
菅野氏は同病院が地域密着型病院であり人間ドッグなどを行う企業病院でもあるという特徴を活かして、若年時比較中のキーワードを的低いPSA値の被験者が加齢とともに前立腺がんを発症していくプロセスを長期間にわたり追跡してきた。その結果、PSA値4.0ng/mlを下回っていても臨床的に重要な前立腺がんが存在する例があること、逆に大幅に上回る被験者でも長期間PSA値上昇を認めず前立腺がんが存在しない例もあること、を述べている。同氏は「PSA値に共通のcut off 値が存在するという幻想を捨てる必要がある」と指摘する。
「PSA値のベースラインは患者1人ひとりで異なるので絶対値的cut off値にこだわると重要ながんの見逃しや無駄な2次検査、臨床上重要でないがん(indolent cancer)への過剰治療を招く恐れがある。大事なのはベースラインの値から一定期間内にどれくらい上昇していくのか(PSA velocity)であり、上昇速度が速い場合はがんの存在のみならずそれが(治療を必要とする)臨床上重要ながんであることをも示す目安となる」(同氏)。
したがって、1回の検査で前立腺がんの疑いありと評価する場合には慎重でなければならない。「PSA 2.0ng/mlで重要ながんが存在する可能性は十分ある。直腸診(DRE)が異常なら生検は必要であるし、もし1年前のPSA値が1.5ng/ml であったとしたら、十分がんの存在を疑わねばならない」という。
初めて検診や人間ドックなどでPSA値を測定する被験者に対して、菅野氏は「PSA値の正常値(基準値)は個人個人人で異なること、個人における経時的な上昇ががん早期発見の目安となること、PSA値が高いことはがんのリスクが高いことを示すため、その値に応じて適切な時期に再検査が必要であること」を伝えている。一般の人たちにわかりやすいように、おおよその目安を次のとおりにしている。
Cancer Review
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