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特集 学会リポート1・第96回日本泌尿器科学会総会より [08 Spring]
パネルディスカッション 進行腎細胞癌に対する分子標的治療薬の役割 -治療の個別化に向けて-         腎細胞がん新薬への期待と課題

2008/06/18
日経メディカルCancer Review

肺転移を重視する山形ストラテジー
 
腎細胞がんのサイトカインと分子標的治療薬についてエビデンスは2つある。1つは、インターフェロンαとスニチニブとを比較したフェーズⅢ試験ではスニチニブがPFSの延長が顕著であったこと。

もう1つはベバシズマブ(アバスチン)+インターフェロンαがプラセボ+インターフェロンαを上回った(AVORENトライアル)ことだ。こうした結果をもとに、パネリストのBeth Israel Deaconess Medical CenterのMichael B.Atkins氏らが作成したアルゴリズムがある。このアルゴリズムには日本では未承認のmTOR阻害剤や高用量IL-2などが組み込まれている(表2)。
 
そこで日本流にアレンジしたアルゴリズム「山形ストラテジー」を冨田氏が作成している(表3)。このストラテジーのポイントは、肺転移を重視しているところだ。「予後不良群でない患者さんで、転移が肺だけならばIL-2ベースにインターフェロンαを使っていく。もしそのほかに転移が広がれば、サイトカインの出番ではない。これは20年の治療経験も考慮した現時点での方針」と冨田氏は説明する。
 
分子標的治療薬が登場してもサイトカインの出番がなくなるわけではない。奏効率は確かに低いが、腫瘍が消えるかもしくは10年以上生存する長期生存患者が5%程度出る。こうした長期完全寛解は分子標的治療薬では現在のところほとんど報告されていないからだ。Memorial Sloan Ketteringが考案したMSKリスクが良好から中間も含めた症例で転移が肺だけという患者では、サイトカインを積極的に使っていくことによって患者の無病長期生存の可能性を高めるというのが冨田氏ら山形大学グループの考えだ。

“PD後の継続”は認められるか
 
 しかしなお、明快な答えが得られていないのが、薬の切り替えのタイミングだ。日本でサイトカインがまず使われ、次に分子標的治療薬を使うケースが大勢を占めている可能性が高い。欧米ならば、病勢が進行に転じたPD(進行)の段階で別の薬に切り替える。しかし、日本のサイトカイン療法ではPDになっても低用量のIL-2が使われ、それが結果的に患者のOSを改善したのではないかと思われるケースもあった。「PDからCR(完全奏効)になった症例を経験することもサイトカイン治療の特徴」と語る。
 
泌尿器科の専門医の一部はこうしたPDの後もサイトカインで続ける治療を“PD後の継続治療”と呼んで行われ、一定の効果が認められてきた。これまでのようにサイトカインの後がなければPD後の治療を続けることは容易だった。患者が望むという側面もあった。しかし分子標的治療薬が登場した現在、そのような治療は認められるだろうか。先行治療の“無効” の判断と治療法の切り替え時期の判定も分子標的治療薬の日本登場がもたらした新しい課題といえそうだ。

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