日経メディカル Cancer Review

2008/6/18

ルポ がん医療の現場

末期がん患者の在宅緩和ケアは薬局との連携でグッと楽になる


薬局と連携し、末期がん患者の在宅緩和ケアに取り組む医師が増えている。
麻薬性鎮痛剤の供給や患者や家族の服薬指導を薬局に任せることで、在宅緩和ケアの医師の負担を減らすことができるという。薬局を味方に付けるポイントは、密なコミュニケーションである。


 東海地域を中心に全国に調剤併設型ドラッグストアを展開するスギ薬局は、10 年ほど前から地域の拠点となる薬局に無菌調剤室を設置し、在宅ケアに力を入れてきた。社内研修では3 年間にわたって在宅緩和ケアの教育を施し、2012 年度には全国1,000店舗の薬局のうち100 店舗に、無菌調剤と24 時間体制を整備する目標を掲げている。スギ薬局在宅医療営業部部長の島田繁氏は「末期がん患者の在宅医療のニーズは高まっている。そのサポートをするのが“地域のかかりつけ薬局” を目指す我々の責務」と言う。

麻薬の管理と供給は薬局に
 
スギ薬局のような、末期がん患者の在宅緩和ケアに対応できる薬局が少しずつ増え始めている。全体から見るとまだ少数だが、地域を見回してみると在宅緩和ケアに熱心な薬局が育ちつつあるのは確かだ。
 
こうした薬局の動きは、在宅緩和ケアを実践する診療所にとっては心強い限りだ。1996 年の開業当初から薬局と連携して在宅緩和ケアに取り組んできた出水クリニック(大阪府岸和田市)院長の出水明氏は、「末期がん患者の緩和ケアはチームケアであり、チームの一員には薬局薬剤師の存在が不可欠」と強調する。疼痛管理に欠かせない麻薬性鎮痛剤の供給や管理指導を薬局薬剤師に担ってもらうことで、医師の負担を軽減できるからだ。
 

麻薬性鎮痛剤は、鍵つきの金庫への保管や帳簿の記載などが求められており管理が煩雑だ。しかも薬価が高く、在庫による経済的な負担が大きい。末期がん患者の疼痛管理は、世界保健機関(WHO)方式に準じて鎮痛剤を段階的に用いるのが一般的だが、モルヒネやオキシコドンの経口剤、坐剤、注射剤、フェンタニル貼付剤など、一通りの種類と剤形、それぞれの規格をそろえておき、患者の状態によって供給する必要がある。「武器である薬の供給を任せられると非常にやりやすい」(出水氏)。
 
名古屋市のまごころ在宅医療クリニック院長の岩尾康子氏も、薬局との連携でメリットを感じている医師の一人だ。「薬剤の供給に加えて、患者さんや家族にしっかり指導してくれる点も助かる」と話す。岩尾氏は、2007年夏からスギ薬局と連携するようになった。最近では、末期がん患者や中心静脈栄養法(IVH)の患者など、医療依存度の高い患者は、患者の希望が特にない限り、無菌調剤室を持つスギ薬局に薬剤供給を任すことが多いという。
 
岩尾氏は、「薬局薬剤師が患者宅に出向いて薬の説明をすることで安全性が高まる」と言う。処方時に医師が説明していても、痛いときだけ服用すればいいと勘違いしている患者が少なくないことを考えると、「再度、薬剤師が説明して、その後、正しく使用できているかを確認してくれれば安心」だ。
 
さらに岩尾氏は、「薬剤師が薬の管理をサポートしてくれれば、患者家族の負担が軽減できる」という。入院中であれば、薬の管理は看護師が行うが、在宅ではすべて患者や家族が行わなければならない。一包化して薬包紙に服薬日を記載したり、服薬カレンダーを使って薬を管理する薬剤師の仕事によって、患者は容易により確実に服薬できるようになる。
 
宮崎市のクリニックうしたに院長の牛谷義秀氏は、「薬の効果や副作用を薬剤師の目から見てくれる点が心強い」と話す。牛谷氏と一緒に在宅ターミナルケアを担当することが多い薬局つばめファーマシー代表の薬剤師、萩田均司氏は、「訪問時には、痛みの状況やレスキュードーズの使用回数、オーバードーズによる傾眠や呼吸抑制が出ていないか、便秘や吐き気などの副作用はないかなど、必ず確認して医師に報告するようにしている」と説明する。また、レスキュードーズを中心に残薬のチェックも欠かさない。「夜間や休日に薬が少なくなると患者さんや家族が不安になる。そうならないように常に気を配っている」(萩田氏)。

(次ページに続く)
(日経メディカルCancer Review)
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