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特集 [08 Spring]
調査・がん診療連携拠点病院・外来化学療法の実態マンパワー、設備、報酬のすべてが足りない中の医療

2008/06/16
日経メディカルCancer Review












精神的にもつらい

 既存の空きスペースを転用して、内科医や抗がん剤の使用に慣れていた外科医を責任者に外来化学療法をスタートしたものの、患者が増えたのに、増床もままならない。人手も足りないことがわかり、現状を改善するきっかけを掴めぬまま、さらに患者が増えているという現場が少なくないのではないか。学会などで、理想的な外来化学療法が報告されていても、自分たちの病院に還元できない焦燥が読み取れる回答も少なくなかった。
 
回答の中には外来化学療法専任の看護師が記入してきたものもあった。「1日平均12~13人、多いときは20人の患者に外来化学療法専任の看護師が1人。応援で別の診療科から看護師が日替わりで来ている。医師は常駐せず、刺針から抜針まで医師の確認は一切ない。安全管理の面で非常に不安が強いが、看護師1人体制は変わる予定もなく、精神的にとてもつらい」。繰り返しになるが、今回の調査はがん診療連携拠点病院に限定して行ったものである。



解説 インフラの整備が課題

化学療法への期待が高くなるにつれ、正しいレジメンを正しいタイミングで実施できる医療体制の重要性が増している。そこに、「外来で」という要請が加わった。効果はあるが、複雑で手間も時間もかかるレジメンが相次いで登場しているが、その負担も現場にのしかかる。10年以上前から外来化学療法に取り組んできたある専門病院の医師は「2000年になれば抗がん剤はすべて経口薬になると読んでいたが、実際は抗体医薬が登場するなど見込み違い」と述懐する。

スタッフの燃え尽きを懸念する回答もあった。一方で、がん医療の均てん化のために設けられたがん診療連携拠
点病院の理想と現状の乖離が、外来化学療法に端的に現れていると見ることもできる。制度がスタートしたばかりで、「その整備には10年かかる」と国立がんセンター名誉総長の垣添忠夫氏は本誌のインタビューで語っているものの、拠点病院の病院間格差は予想以上に大きく問題があると多くの回答者が指摘している。

「患者の中には入院が適している人もおり、まずは外来ありきという方針が問題」と指摘するのは静岡がんセンター呼吸器内科部長の山本信之氏。導入当初に有害事象が出現しやすいシスプラチンの投与などは、最初の数日間は入院させたいという。

診療報酬の裏づけも欠かせない。静岡がんセンターの試算では、消化器内科、呼吸器内科のがん患者の化学療法を入院で行うと一人当たり70,000円の赤字、推奨されている外来で行ったとしても9,000円の赤字になるという。4月の診療報酬の改定では、現行の「外来化学療法加算」(現行1日につき400点)を「外来化学療法2」(390点)として引き下げ、専門の医師、看護師、薬剤師を配置し、高度な体制を整えた医療機関は「外来化学療法加算1」(500点)として引き上げられる。スタッフの拡充を求める声を反映した措置ではあるが、今後も、実態にあったスタッフの育成と診療報酬の検証を続けていく必要があるといえそうだ。

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