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ルポ がんの現場 [08 Spring]
慈恵医大病院・国際医療福祉大三田病院成功の鍵は「小さく導入大きく育成」国内初の前立腺がん地域連携パス

2008/06/16
日経メディカルCancer Review















開業医向けには手厚いバックアップ機構が欠かせない

このパス運用に至るまでのワーキング・グループ会合(慈恵医大病院、三田病院、港区医師会)では、開業医からさまざまな意見が飛び出した。例えば、「前立腺がんの治療には多くの選択肢があるため、何をすればよいのかわからないという声が聞かれた」( 山崎氏)。

そこで「診療所フォローアップ用パス」を作成した。当初、前立腺がん地域連携パスは、診療所でのPSA検診結果と病院での2次検診結果、「がん無し」と診断された患者が診療所で経過観察を受ける際の診療指針を示した「PSA2次検診パス」と、病院での前立腺がんの入院治療、病状が落ち着くまでの外来での経過観察、その後の診療所でのフォローアップを示した「前立腺がんパス」の2種類だけだった(図3)。

診療所フォローアップ用パスには、診療所での診察スケジュール、チェック項目、検査項目、病院への再紹介の目安などが具体的に提示されており、泌尿器科が専門外の開業医にも容易に患者のフォローアップができるように配慮されている(次ページ図4)。また、「PSA値4.1ng/ml以上」で2次検診という設定に対しても、開業医から、「それ以下でも、がんになる可能性がある」といった疑問の声が上がった。

しかし、基準値を「4.1ng/ml以上」に設定することで、「診療所でのリスク患者の捕捉と、病院と診療所との連携が比較的容易にできる」(山﨑氏)とメリットを説明する。さらに病診間の連携を、よりスムーズにするため、前立腺がんに特化した紹介・逆紹介用の診療情報提供書も作成している。開業医からの紹介患者を待たせないために、生検外来も開設。加えて開業医向けに、インフォームド・コンセントを取得するためのPSA2次検診患者説明用パンフレットも用意している。

このような試みは、開業医に対する強力なバックアップ機構の役目を果たしているといえる。山崎氏は、「CaPMnetでは泌尿器科以外の開業医が参加しやすいように、ダブル主治医体制をとっている。経過観察やフォローアップ中に、患者のPSA値上昇や症状悪化、副作用の出現などが見られた場合、あるいは変わりなく経過している場合でも、当院で1年ごとに定期チェックしている」とアピールする。

パスは小さく導入し大きく育てるのが要

一方、実際にCaPMnetに参加している診療所では、前立腺がん地域連携パスをどのように見ているのか。AU医療連携カンファレンスのメンバーで南外科泌尿器科(東京都墨田区)院長の南孝明氏は、「当院でできない検査を慈恵医大病院で迅速に行ってもらうことができる。また、私と大学病院医師の両方からの意見を患者が聞けるため、患者にとっても安心感がある」と地域連携の意義を強調する。だが、改善すべき点も出ている。

「慈恵医大病院に紹介した患者が放射線科で治療した後、その詳細な結果がフィードバックされてこない」(南氏)といった内容だ。これは院内連携が緊密にとれていないために生じたことだが、氏は「医療連携室に協力してもらい、院内の他科との連携はもとより病診間の連携も緊密化していきたい」と考えている。

また、パス構築前には、開業医に逆紹介した患者が1年経っても慈恵医大病院に来院しないことがあった。パスの運用で、この点が改善されるかどうか、関係者は注目している。前立腺がん地域連携パスの作成に携わった国際医療福祉大学三田病院副院長の武藤正樹氏は、地域連携パス成功のポイントを「まずは小さく導入して、大きく育てることが大切。

最初から多くの医療機関が参加しても、なかなかうまく回転しない」とアドバイスする。また、パスの作成は、「病院・診療所の医師だけでなくコメディカルの意見を反映させることも肝要。会合では職域を超え、顔を突き合わせて議論することで、パスが形作られてくる」(武藤氏)という。

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