日経メディカル Cancer Review

2008/6/16

ルポ がんの現場 [08 Spring]

慈恵医大病院・国際医療福祉大三田病院成功の鍵は「小さく導入大きく育成」国内初の前立腺がん地域連携パス


患者・家族の不安解消や医療機関間の診療内容に関する説明の不一致解消と診療目標やプロセスの共有化、平均在院日数の短縮化など、患者・家族と紹介元・紹介先の医療機関の3者にメリットがある地域連携クリニカルパス。

東京慈恵会医科大学附属病院、国際医療福祉大学三田病院と診療所など地域の医療機関との間で、国内初の前立腺がん地域連携パスが2007年4月からスタートした。連携成功のポイントを探った。


外来のスリム化と患者待ち時間解消


「増え続ける外来患者によって、急性期医療の機能低下が深刻化してきたため、クリニカルパスの構築に踏み切
った」と東京慈恵会医科大学附属病院泌尿器科・准教授の山﨑春城氏は、国内初となる前立腺がんの地域連携クリニカルパス作成のきっかけをこう話す。

前立腺がんの新規患者数は団塊世代の高齢化も手伝って急速に伸びている。加えて術後患者の10年生存率も90%と良好であるために、全体の患者数は非常に大きなものになる。前立腺がんの治療を1つの医療機関で一貫して行うことには無理がある以上、患者が住む地域の医療機関で連携していこうという話が生まれるのも自然な流れといえよう。

国内初の独立した大学泌尿器科として開設以来、80年以上の歴史を持つ慈恵医大病院の泌尿器科は、前立腺がん担当医6人を擁し、小線源療法や強力な内照射療法(HDR)、腹腔鏡による前立腺がん手術など多彩な治療メニューを持つなど、前立腺がん治療では国内屈指の実績を誇る。このため、全国から紹介患者が来院し、年間の入院患者数は1500人、手術件数は1200件、このうち生検は420例、1日の平均外来患者数は120人に上る。全国から患者を受け入れているために、外来は常に混雑している状況だ。

窮状を打開するため、同院が注目したのが、前立腺がんの地域連携パスの構想だった。同院と同じ東京・港区内にある国際医療福祉大学三田病院と協議し、共同してこのパスの構築に取り組むことを決めた。国際医療福祉大と会合を持ったのは、地域連携パスの構築に長じていたからだ。また、「2006年7月から港区で、前立腺がん無料検診が始まったことも、パス構築の追い風となった」(山﨑氏)という。会合では急性期病院間の役割分
担と前立腺がん検診・診断・治療のアルゴリズムのすり合わせを行った。

「がん無し連携」と「がん有り連携」

07年1月には、「港区前立腺がん地域連携パス相談会」を慈恵医大病院、三田病院、3人の開業医の3者で開催し、前立腺がん無料検診を1次検診と位置付けたアルゴリズムを作成した。具体的には、まず港区内の診療所で実施されるPSA無料検診で、PSA値4.1ng/ml以上の患者は前立腺がんの精検が必要と判断され、慈恵医大病院や三田病院での2次検診の受診を促される(図1)。

その後、病院は精検必要患者に対して、直腸診や生検などを行い、前立腺がんと前立腺肥大症の鑑別診断を行う。その結果、前立腺がんではなく、前立腺肥大症と診断された患者は、患者が住む近くの開業医に逆紹介され、診療所で薬物療法を中心とした治療を受ける。このとき、患者経過管理のツールとして、地域連携パスが使われることになる。

また、結果的に前立腺がんの疑いにとどまった患者に対しても、あらかじめ定めた方法に従い、診療所で継続してPSAなどの定期フォローを受ける。最終的に前立腺がんと確定診断された患者は、画像検査で病期の判定が行われ、それ以降の治療は患者の病態に応じて病院で対応するといった流れだ。

つまり、このアルゴリズムは、「がん無し連携」と「がん有り連携」に大別され、また、病院と診療所の役割分
担がわかりやすく明確化されている点が最大の特徴となっている。このアルゴリズムを含むパスは、07年3月に開催された慈恵医大病院泌尿器科と東京近郊の開業医との情報交換組織「AU(Atago Urology)医療連携カンファレンス」で、41人の医師やコメディカルらによって検討が加えられた。そして翌月には、前立腺がん地域医療連携「CaPMnet」(Cancer of the Prostate ManegementNetwork)が、慈恵医大病院、三田病院と開業医13人の参加で、運用を開始した(図2)。

(次ページに続く)
(日経メディカルCancer Review)
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