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化学療法アップデート [08 Spring]
慢性骨髄性白血病活発化するポスト・イマチニブ開発戦争

2008/06/16
日経メディカルCancer Review

イマチニブ抵抗性を克服する第2世代薬も国内承認間近

 イマチニブ抵抗性の最大の原因は、bcr/abl遺伝子内の点突然変異にある。bcr/abl遺伝子のキナーゼ領域に多くの点突然変異が発生し、これがBCR/ABLたんぱく質のアミノ酸変異となり、イマチニブが効かない耐性白血病細胞を作り出していると考えられる。そこでイマチニブ抵抗性の克服を目的にアミノ酸変異があるBCR/ABLたんぱく質にも効果を発揮する、多くの新しい阻害薬の開発が始まっており、海外では既に発売されているものもある。これら新薬群は、イマチニブをCMLに対する分子標的治療薬の第1世代とするならば、第2世代ともいう
べきものである(表3)。

 第2世代薬の筆頭はダサチニブ(dasatinib;354825 dasatinib)である。マルチキナーゼ阻害薬でありBCR/ABLを始め、SRCファミリーキナーゼのほか、c-KIT、epherin(EPH)受容体キナーゼ、PDGF-β受容体キナーゼなどの発がん性キナーゼを強力に阻害する。イマチニブと構造式はまったく異なっているが、イマチニブ抵抗
性のCMLに有効であり、06年6月に米国で認可されている。

 X線結晶解析から、イマチニブはBCR-ABLキナーゼドメイン(閉鎖型)にのみ結合するのに対して、ダサチニブは活性型(開放型)立体構造と不活性型(閉鎖型)立体構造にも結合することが推察される。BCR/ABLを発現するヒトCML細胞株を用いた非臨床試験ではイマチニブの300~650倍の細胞障害効果があったとい
う報告もある。

 日本国内の臨床試験は、抵抗性もしくは不耐容性の患者を対象に、第Ⅰ相期(18人)が05年7月に開始、第Ⅱ相期(36人)が06年7月に開始され、07年3月にすべての試験が終了した。慢性期C M Lに限った観察期間6カ月の
MCyR細胞遺伝学的効果は不耐容患者(n=12)では83%、抵抗性患者(n=18)では33%となった(図1)。

 また、治療が困難な移行期/急性期CML患者11例を対象に行った試験(観察期間3カ月)でも、27%の患者でMCyRの細胞遺伝学的効果が認められた(図2)。現在、厚生労働省が審査中であり、08年内の登場が期待される。

 有害事象(表4)の中で注目されるのは、浮腫と胸水の貯留である。投薬中に咳や発熱が認められた場合には胸部X線写真を撮影し、減薬や中止などの処置を講ずる必要がある。またイマチニブ同様、間質性肺炎も生じることから、特段の注意が必要であるといえるだろう。ダサチニブのほかに、第2世代薬にはイマチニブよりも高い親和性でABLと結合するニロチニブ(AMN107)、ダサチニブ同様srcとablのキナーゼの双方を阻害するボスチニブ(bosutinib;SKI-606)がある。前者は既に日本国内でも開発が行われ、後者もまもなく開始されるので、近い将来の登場が期待される。

 これら第2世代薬はイマチニブ抵抗性の症例を適応としているが、当然イマチニブに代わり1stラインで使用される可能性も考えられる。現在、これら第2世代薬3剤は、1stラインに使った場合の有効性の検討が国際臨床試験で進められており、日本からも参加している。これらは海外の企業が創出したものであるが、日本でもイマチニブ抵抗性に有効なCML薬NS-187(INNO-406)が開発され、米国で臨床試験が進められている(表3)。

 ただし、これら第2世代薬にも弱点がある。イマチニブ抵抗性の原因となる点突然変異の中でも、「T315I」にはいずれも有効性が低いことだ。そこで、T315I変異を持つ症例にも効果を持つ薬剤も開発されつつあり、日本でも臨床研究が始まっている。

第2世代抵抗性をしのぐ第3世代の臨床研究も開始

 T315Iを持つ第2世代薬抵抗性を克服する第3世代薬がMK-0457だ。これは細胞周期を回転させるオーロラ・キナーゼという酵素の働きを阻害する全く新規の薬剤である。現在、国際臨床試験(第Ⅱ相)が実施されており、日本国内からも参加している。T315Iを持つ患者の数は多くないが、日本国内では、そうした変異を持つ患者が発見されると、即座に浜松医科大学附属病院血液内科の大西一功氏に連絡が行き、MK-0457による治療が受けられる体制が整っている。

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