日経メディカル Cancer Review

2008/6/14

コメンタリー[08 Spring]

どうするモンスター患者・家族への対処 組織としてのアプローチが重要毛利元貞((有)モリ・インターナショナル代表取締役・暴力分析コンサルタント)


毛利元貞(有)モリ・インターナショナル代表取締役・暴力分析コンサルタント)

近年の医療関係者を悩ませている問題の一つに、一方的に自分の要求を主張する患者や家族の増加がある。度が過ぎると、医療に支障をきたす事態になるほか、医療関係者の心身の健康を蝕む事態に発展するケースもある。
このような“モンスター患者・家族”への対応にはチームや組織単位での対応が求められると、対人リスクマネジメントを専門とする毛利元貞氏は指摘する。


ここ数年、対人リスクの危機管理を専門とする当社では、医療関係者から相談をよく受けます。具体的には、「一部の患者やその家族から暴言や暴力を受けて困っています。このままでは医師も看護師も心身ともに参ってしまうので、どのように対処すればよいでしょうか」といった内容です。患者やその家族からの暴言や暴力から、どのように医師や看護師を守るのか。それを成し得るためにはまず、組織としてのアプローチが大切になります。病院トップが率先し、医師、看護師、事務スタッフなど、すべての病院関係者の協力を得て意思の疎通を図り、力を合わせることが求められます。

ちなみに、暴言や暴力への対処方法を述べると次のような方法が挙げられます。サービス向上委員会・苦情処理係・意見箱などの設置、警察OBの配置、暴力行為を想定したマニュアルの作成、監視カメラや警察への通報装置の導入、警備員の巡回強化、治療行為や入院に関するマナー指導およびポスターの設置、入院時の誓約書への記載などがあります。

しかし、これらの方法を用いるときは慎重さが要求されます。結果と影響を考慮せずに行うことによって、患者やその家族の機嫌を損ね、情況を悪化させてしまう危険があるからです。暴言、敵意は期待の裏返しでもある
対処法を間違えると、医師や看護師は“被害者”という意識が正当化されやすく、患者やその家族に非があるという構図になりがちといえます。彼らの自尊心を傷つけやすく、差別や人権問題という複雑な問題にまで飛び火し、訴訟問題に悪化することもあります。

暴言や暴力といった言動への対処では、対処する側が感情的にならないことが大切です。こちらが正しくて患者やその家族に非があったとしても、彼らは「自らの言動は正しい」と感じているものです。相手の自尊心を絶対に傷つけないことが求められます。だからこそ、理性的に接する努力と忍耐力が求められます。相手の気持ちを理解したうえで対処しなければ、感情がぶつかり合うだけになってしまいます。

考えてみてください。患者やその家族にとって、病院とは自分や身内の生死にかかわる大切な場所を意味します。病院で働く医師や看護師に対して、救済者としての役割を無意識のうちに期待してしまうものです。病気を治してくれるという思いを込めて、多くの期待や希望を託します。その気持ちが強ければ強いほど、過度に期
待します。だからこそ、医師や看護師が期待に応えてくれないと感じた瞬間、裏切られたという思いが生まれ、心の痛みが衝動的な怒りや憎しみに変貌するのです。その結果として、暴言や暴力を正当化させてしまいます。

また最近では計算ずくめで、理不尽で不適切な言動を突きつけてくる相手もいます。このタイプは自己中心的で医師や看護師のミスを誘うべく、狡猾な言動に出ます。過剰なサービスを要求する、治療費を拒否する、などの不当な要求や悪質なクレームをも平然と口にします。

(次ページに続く)
(日経メディカルCancer Review)
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