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トピックス2 [08 Winter]
腎細胞がんに分子標的治療薬ソラフェニブが承認される

2008/04/15
日経メディカルCancer Review

 厚生労働省は1月25日付けで腎細胞がん分子標的治療薬ソラフェニブ(商品名「ネクサバール錠200mg」の製造販売を承認した。適応は「切除不能または転移性腎細胞がん」。腎細胞がんを適応症として承認を取得した分子標的薬はネクサバールが初めてだ。

 ネクサバールは、バイエルヘルスケアとオニキス・ファーマシューティカルが共同開発した経口マルチキナーゼ阻害剤。2005年に米FDA(食品医薬品局)で承認を取得して以降、現在世界約60カ国で承認されている。転移性腎がんの予後は不良で、従来の抗がん剤や放射線照射にも抵抗性。そのため、インターフェロンやインターロイキン2などのサイトカイン製剤が標準治療となってきたが、腫瘍縮小効果はCR(完全奏効)、PR(部分奏効)を合わせて10~20%とされている。

 腎細胞がんでは50~60%の患者でvon Hippel-Lindauがん抑制遺伝子(pVHL)が変異しているが、この変異によってpVHL遺伝子の本来の機能が低下していることが腎細胞がんの原因の1つと考えられている。体の中では、低酸素状態になると、HIF-α(低酸素誘導遺伝子)が発現して血管内皮細胞増殖因子(VEGF)や血小板由来増殖因子(PDGF)の産生を促進して、血管新生が起こる。pVHL遺伝子は、役目が終わったHIF-αを分解して、血管新生やそのほかの細胞増殖を止めることにある。

 しかし、pVHL遺伝子に変異が起こり、機能が低下するとHIF-αが恒常的に働き続けることになり、腫瘍の増殖や腫瘍血管の新生という好ましくない現象が引き起こされることになる。von Hippel-Lindau病は、小脳や脊髄の血管芽腫、網膜の血管腫など身体の様々な部位に腫瘍を作ることが知られているが、いずれも良性腫瘍で、悪性腫瘍は腎細胞がんのみとされている。

 VEGFやPDGFの受容体と結合すると細胞分裂と血管新生を促す細胞内シグナルが発信される。このシグナル伝達には複数のリン酸化酵素キナーゼ)がかかわっており、ネクサバールはこれらキナーゼを阻害することによって血管新生の抑制や細胞増殖の阻害効果を発揮する。

 転移腎細胞がん患者を対象に行った国際臨床試験TARGETsでは、無増悪生存期間中央値(medianPFS)が偽薬群で2.8カ月、ソラフェニブ投与群で5.5カ月と倍増させた。また全生存期間中央値(medianOS)では、偽薬群で14.7カ月に対してソラフェニブ投与群では5割生存に達せず(2007年5月の米国臨床腫瘍学会での発表)という結果が出ている。

 血管新生阻害剤であるため、皮膚障害や手足症候群(Hand-Foot syndrome)といわれる手のひらや足の強い痛みと発赤ができ、有害事象としてとりわけ注意する必要がある。手足症候群は重症化すると歩行困難となるため、患者の精神的な落ち込みの一因にもなると専門家は指摘する。また高血圧や消化器症状も注意する必要がある。

 サイトカインは20年にわたる使用経験があり、ネクサバールが登場しても、一斉に切り替わることにはならないと泌尿器科の専門医は口をそろえる。しかし、奏効率ではるかに強力な分子標的治療薬が登場したことによって、泌尿器科がんに分子標的治療という新しい時代が開かれることは確かなようだ。

 腎細胞がんの分子標的治療薬としては、スニチニブテムシロリムスがある。スニチニブは承認申請中であり、テムシロリムスは臨床治験中だ。将来は、これらの分子標的治療薬同士の併用や連用の可能性、あるいはサイトカイン治療との組み合わせなどが検討されることになりそうだ。

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