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[特集]輸液療法 [07 Winter]
がん緩和ケアの味方にも敵にもなる その輸液、過剰では?

2008/01/10
日経メディカルCancer Review

点滴を減らす際には患者と家族に説明しておく

 輸液の過剰は尿道カテーテルや酸素モニターの必要性を増大させることから、俗に言うスパゲッティー症候群の原因にもなる。輸液を減らして症状が改善することを確かめることは、患者や家族にも歓迎されそうだが、実際は異なるケースも少なくないようだ。「輸液を減らすと、もう治療は終わりなのかと患者や家族をがっかりさせてしまうことが多い。減量は積極的な治療の終了ではないということを説明することが重要」と向山氏。

 こうした配慮は最近、終末期の場となりつつある在宅においても行う必要がある。在宅医療による看取りを積極的に行っているある医師は、「輸液管理の失敗から胸水が貯留した例を見ることがある」と語る。こうした事態を避けるために、終末期の患者の体内で起こる生理的な変化について考える必要があると向山氏は指摘する。日本緩和医療学会では、こうした留意点をまとめて「終末期癌患者に対する輸液治療のガイドライン」を作成して同学会のサイトで公表している。
http://www.jspm.ne.jp/guidelines/glhyd/glhyd01.pdf

■ コラム
医療者の「注意」だけでは限界
新しい治療技術の開発が必要
 向山氏は、終末期の緩和医療こそ、さかんに必要性が喧伝されている個別化医療の先駆だと指摘する。「患者さんごとに異なる状態を見極めて適切な治療法を選択する必要がある」。でも、複雑な病態に対処するために現在の選択肢では足りないともいう。食欲を上昇させるペプチドホルモンのグレリン、低用量の成長ホルモンの使用など悪液質を改善する治療法が試みられている。また、サイトカインを中和する抗体医薬も有望な治療法といえるかもしれない。

 進行・再発がん患者に合併する消化管閉塞は悪心・嘔吐や腹痛の原因となる厄介な病態だ。症状を悪化させる仕組みとして、図に示すような「悪性サイクル」の存在が明らかになっているが、最近そのサイクルを断ち切るソマトスタチン誘導体オクトレオチドが登場している。投与方法として頻回の注射投与を必要としない持続皮下投与が採択されていることから経口投与できない患者さんの治療に適しており、歩行や入浴時の取扱いが簡単で在宅医療に適切な方法と言える。

 終末期は通過するだけのものだったが、多くの患者がここを快適に過ごすことを求めている。生存期間のみならず、終末期にも新しい技術革新が求められ始めている。

消化管閉塞では、管内腔の表面積の増大から酸素供給障害が生じ、水・電解質の吸収能が低下する。この結果、内容物が増大し、消化管の膨張を増大させるという「悪性サイクル」が形成され、様々な消化器症状を呈する(Eur J Palliat Care 1:20-22,1994)。オクトレオチドはこの悪性サイクルを断ち切り、消化器症状を緩和する

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