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[ルポ・がん医療の現場] [2007 Winter]
DPCは医師自身が納得するため 合言葉は「説明できる医療」
手稲渓仁会病院(札幌市)

2007/12/20
日経メディカルCancer Review

DPCは現場の不満を
客観化する手段である


 そもそも、やみくもな利益偏重を目的に設計したクリニカルパスを医師に強制するシステムでは、診療科医師らは不信を持ち、警戒したであろうことは容易に想像される。DPCデータで他の医療施設と比較して、際立っておかしなデータが出たときには、それを医療現場にもどして議論するという。

 他の施設に比べて、収益が悪いというデータが出ても、ただちに改めるべきかどうか、まず現場の意見を聞く。医療の修正をすることが理にかなっている場合は改めるが、制度が理不尽である場合は、むしろ制度を修正しなければならない。DPCへの無批判な迎合は、医療の質を低下させるばかりではなく、医師のやる気も削ぐことになるだろう。「現場の意見を聞いて、どうしてこんな分析結果が出たのか、説明できれば現状を維持し、説明できなければ改める。制度の不合理は学会発表や研究班の活動を通じて、行政に修正を求めていく」。

 つまり、DPCは院内での取り組みの誘発のきっかけと、支払い制度への妥当性の検証という2つの役割を持っていることになる。

 実際のベンチマーク分析の結果を見てみよう。

 データは非特定営利法人VHJ機構に参加する民間病院とのDPCベンチマーク・データの比較の結果だ。次ページの図2は胃がん治療の比較を示している。ここでは、手稲渓仁会病院は平均的な医療を行っていることになるが、入院期間が長くなるほど、収益が上がる傾向にあり、これは制度の未熟さの反映といえる。図3の肺がんについては、収益が低い医療が行われていることがわかる。

 図4の大腸がんでは手稲渓仁会病院ではないが、際立って収益性の低い医療を行っている医療機関が目を引く。内訳を見ると、画像検査などが突出して多く行われるなど、多医療機関との違いがあることが一目瞭然だ。その医療機関では大腸がん医療の検証が必要だろう。図5の乳がんでは、手稲渓仁会病院の収益性が低い。樫村氏が、診療科と協議したところ、センチネルリンパ節生検を行うと赤字になってしまうことが分かった。「センチネルリンパ節生検は患者にとって不可欠な手技で、はずすことはできない」と判断、収益はマイナスになっても、継続させることにした。こうした検討を繰り返し、胃がんや大腸がんのクリニカルパスは過去、3回見直しを行ってきた。

 ところで、こうしたDPCデータには、入院期間、医療行為と収益性の相関は瞬間的に把握できるが、生存期間などの医療の結果については明らかではない。つまり、冒頭の公的病院院長の疑念を晴らすことはできない。そこで、治療成績については、ホームページで公表している。

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