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[化学療法アップデート][07 Autumn]
実地医が知っておくべき疼痛管理の基本
「オピオイドの使い方」、「痛みの診断」、「医療用麻薬の取り扱い」を中心に

2007/10/19
日経メディカルCancer Review

2.痛みの原因が見あたらない?

 画像検査の発展によって多くの組織障害が可視化されるようになり、疼痛の診断や治療における役割は大きい。一方、「痛みの原因が画像で見つからない」という相談も少なくない。中には、「原因がないのだから痛いはずがない」と言われしまう患者もいる。もちろんすべての原因が画像で見える訳ではなく、微細な障害を画像でとらえることは困難であるが、原因は明確であるにもかかわらず痛みなどの症状の原因として見落とされてしまうことも多いものに「関連痛」がある。

 関連痛とは「痛みの原因部位に隣接する、あるいは離れた部位に発生する痛み」であり、特に腹部内臓のがんや骨転移で見られる。がん以外の関連痛として有名なのが、心筋梗塞などの場合に見られる左肩や上肢への放散痛である。

 関連痛の特徴は、(1)痛みの原因となる部位(内蔵など)の知覚神経支配に一致した皮膚の知覚神経レベルに痛覚過敏やアロディニア(痛みを生じない刺激で痛みを感じる現象)などの知覚異常や、あるいは圧痛として認められる(図2)。(2)痛みの原因となる部位の知覚神経支配レベルと同じレベルの運動神経支配の筋肉の収縮と圧痛、(3)痛みの原因となる部位の知覚神経支配レベルと同じレベルの交感神経支配領域の皮膚に発汗や立毛筋収縮(鳥肌)や冷感を認める(図3)。

 膵臓がんなどで見られる背部痛は関連痛の典型であるが、膵臓の知覚神経支配である胸髄(Th6-10)に一致した皮膚(多くは膵臓の解剖学的な位置より広範囲)の痛みに加えて、同じレベルの肋間筋収縮によって、呼吸時の抵抗感が強くなり、呼吸困難を訴えることが多い。

 関連痛はその概念を理解していないと診断することができない。また画像診断でとらえることができない比較的頻度の高い疼痛であるが、鎮痛薬にはよく反応するため、原因不明の疼痛に対しては、関連痛を十分に念頭において身体所見の確認を行うべきである。卵巣転移による筋収縮と交感神経刺激症状(立毛筋収縮)を認めた症例を提示する。

* * *
症例:50歳女性 
右乳がん術後8年経過。左脇腹に刺すような
痛みを訴え、精査を行われたが原因不明のま
ま経過。再発への不安が強いことも原因とし
て疑われ、緩和ケア外来受診。
身体所見:
左Th11-12痛覚と冷覚の約50%の低下
左Th12に一致してアロデニア
立体で左腹部の筋収縮(写真1)
アロデニアに一致して立毛筋の収縮(写真2)
を認めた(写真2は患部、写真3は同じレベル
の反対側:異常所見なし)

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 左下腹部の疼痛に加えて、立毛筋の収縮(交感神経系)、と痛覚異常(知覚神経)、筋収縮(運動神経)の異常がそろって認められることから、このレベルの神経文節に強い痛覚刺激が内蔵から入っている可能性を考え、侵害刺激の求心路にTh12を含む内蔵臓器の検索が再度必要と判断した。開腹の結果、左卵巣に微小な転移巣が認められた。

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