日経メディカルのロゴ画像

連載 DPCへの移行はがん医療をどう変えるか 第3回 [07 Autumn]
乳がん標準パスの遵守状況
国立がんセンターのクリティカルパスを例に

2007/10/18
日経メディカルCancer Review

 投薬や検査などが日当点によって包括化されるDPC(Diagnosis Procedure Combination)制度の導入は、高額な薬剤や画像診断を必要とするがん医療に大きな影響を与える。医療の質を下げることなく、DPC制度を活用するためにはベンチマーク分析を活用し、自院のクリティカルパスを見直していく必要がある。今回は、国立がんセンターが提示している乳がん手術のクリティカルパスを例にベンチマーク分析の実際を紹介する。(グローバルヘルス・コンサルティング 渡辺幸子、塚越篤子、相馬理人、濱野慎一、アキよしかわ)

 今年5月15日に開催された経済財政諮問会議で、「DPCの対象病院を現行の360病院から、2012年度までに1000病院に増やす」との目標が立てられたことを連載の第2回で述べた。8月29日に公表された中医協の資料によると、今年新たに702病院がDPC準備病院に加わった。これでDPCに関わる病院は、現在のDPC対象病院と準備病院に加え、1433病院になる。仮に準備病院が全てDPC対象病院へ移行するならば、2012年どころではなく、来年にも、経済財政諮問会議の立てたDPC1000病院の目標を突破することになる。これは、急性期医療における出来高払いの終焉を意味する。もはや、もうあれこれ迷っている時間はない。今、DPCへの対応を行い、そしてDPCの次の時代への準備をしなければならない。

ベンチマーク分析による
がん医療の均てん化の促進


 前回(本誌Summer号)、質とコストを客観的に把握する方法として病院ベンチマーク分析を紹介した。ベンチマーク手法は、厳しい疾病別包括払いの環境下で生き残るための手法として1980年代に米国で広く普及した。ただ単にコストを下げるだけでは「安かろう、悪かろう」を招き、改善とは言えない。病院経営では医療の質を維持、向上しながらコスト削減に向けて努力することが求められる。病院の改善の為に行うベンチマークでは疾病・行為ごとに、コストや運営効率だけではなく、アウトカム(医療の質)の比較分析を行うことが大切である。

 出来高制度とは異なり、投薬、注射、検査、画像などが日当点によって包括化されるDPC制度では、そのDPCコードごとに定められた入院期間IやIIの在院日数を意識しながら、包括対象となる診療行為をコントロールしなければならない。高額な抗がん剤や高額な画像診断が必要ながん治療は、包括化の影響をより大きく受ける。今後、ベンチマーク手法などを活用し、自院のクリティカルパスを見直す努力を行う必要がある。

 2006年6月に成立し、今年の4月1日から施行された「がん対策基本法」は、がんの予防及び早期発見、がん医療の均てん化の促進、そして研究の促進など、国・地方自治体の責務を明確に規定した法律である。そのような中、データベースの整備も進められ、治療の均てん化を目的とした標準治療パスが公開されることが強く求められている。国立がんセンターのホームページにおいては2007年8月現在、標準治療として乳がん、肺がん、大腸がんについての標準パスが公開されている。このうち最初に取り上げられたのは乳がん(腋窩部郭清を伴う)であった。呼吸器がん手術パス、結腸がん手術パス、前立腺がん手術パス、子宮がん手術パス、乳がん化学療法(AC療法)パスなどは現在検討中で、今後の公開が期待される。今回は、国立がんセンターが提示している乳がん手術のクリティカルパスの要点についての遵守状況をベンチマーク分析する。※1

※1 分析対象は、2006年7月以降に退院した症例である。在院日数が各特定入院期間の2倍を超える症例、DPC対象外病棟へ転棟した症例、死亡症例は対象外とし、条件を満たす症例が5症例以上ある病院(89病院)の2,501症例とした。

  • 1
  • 2
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日経メディカル Cancer Review

この記事を読んでいる人におすすめ