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特集 Japan-Korea DIF Meeting 2007 [07 Autumn]
TS-1のベストパートナーは誰か
議論白熱・胃がんの化学療法

2007/10/09
日経メディカルCancer Review

会場の参加者は概ね
TS-1 + CDDP併用療法を選択


 AGCにTS-1 + CDDP併用療法を用いるかという問いに対するanswer padを用いた参加者の意見は、日本人参加者の68%、韓国人参加者の31%が“Yes”とした。また、全身状態の悪い、もしくは高齢患者に対するTS-1単独療法の選択については、韓国人参加者の79%が“Yes”だったのに対し、日本人参加者は61%にとどまった。一方、分子標的治療薬については、いずれの国の参加者とも40%強がその臨床応用を期待するとした。

胃がん術後補助療法~
ACTS-GC 試験への注文

 議論に先立ち、兵庫医科大学外科学特命教授の笹子三津留氏によりAdjuvant ChemotherapyTrial of TS-1 for Gastric Cancer(ACTS-GC)studyについての解説が行われた。

 ACTS-GC studyは、D2郭清術を受けたstage2/3の胃がん患者を対象に、術後補助化学療法としてのTS-1単独治療の有用性の検討を目的とした全国109施設による無作為多施設共同臨床試験である(図10)。主要評価項目はOS、副次評価項目は無再発生存期間と安全性である。当初、5年間の観察期間を予定していたが、3年時点でTS-1の有効性が確認され、効果安全性評価委員会の勧告からその時点で試験を中止し結果発表となった(図11)。服薬遵守率も高く、有害事象についても手術単独群と比べ差がなかった。部位別再発については、TS-1がリンパ節、腹膜再発を抑制する傾向を認めた。笹子氏は、これらのACTS-GC studyの成績から、TS-1単独療法はstage 2/3の胃がん患者におけるD2郭清術後補助化学療法の標準治療と考えられると結論づけられたと説明した。

「今後の解析データを
注意深く見守りたい」の声


 このセッションでは、国立Seoul大学医学部内科学教授のYung-Jue Bang氏と大阪医科大学外来化学療法センター長の滝内比呂也氏がコメンテータとして特別発言を行った。

 Bang氏は、1,000症例を超える大規模な試験であり、バランスのよいデザインであるとした上で、109という参加施設の多さから手術の技能レベルの均質性に疑問を呈した。また、3年以降のTS-1群の生存曲線が下降している点、現時点で4年間を超える経過観察に基づく解析が行われた症例が10%にとどまっている点から、TS-1群の5年生存率に注目しているとした。

 滝内氏も、3年生存率がTS-1群で改善をみせたことは、stage 2/3の胃がんに対するD2郭清術後の補助化学療法として好適であることを示しているとしながら、Bang氏と同様に3年以降の生存率の低下を問題視、5年生存率を見守りたいとした。

日本ではD2郭清術後補助にTS-1
韓国は保険適用待ち


 会場では、answer padを用いてstage 2/3胃がんにおけるD2郭清術後補助化学療法についての参加者の考え方を聴いた。まず、D2郭清術後に補助化学療法を実施するかという問いに、日本人参加者は91%が、韓国人参加者は80%が実施すると答えた。また、ACTS-GCstudyの成績について患者に知らせるかという問いには、日本人参加者の73%、韓国人参加者の44%が知らせるとした。実際に行っている術後補助化学療法を問うと、日本人参加者の92%がTS-1としたのに対し、韓国人参加者は43%がFP療法とし、TS-1は16%にとどまっていた。韓国におけるTS-1の選択比率の低さは保険適用がないことが理由であることも判明した。

 TS-1による胃がん術後補助化学療法が明確に位置づけられるには、ACTS-GC studyにおける5年生存率を中心とした追加データ解析と、日本と異なる医療保険制度の国においては、保険適用の認可が必要であることが改めて確認された会であった。(ライター:横山知典)

コラム
変わる化学療法のエンドポイント


 がん化学療法の領域では新薬の承認が欧米に比べ、大幅に遅れるいわゆるドラッグ・ラグが大きな問題になってきた。しかし、グローバル試験に日本からも参加できる体制が整備されており、消化器がん新薬に限っていうとドラッグ・ラグは、大幅に改善しつつある。

 ただし、グローバル試験に参加する場合、対照となるレジメンに日本で未承認の薬が入る場合があるため、現場レベルで細心の注意を払いながら、試験を行う必要があるだろう。今回のDIFミーティングを見てもわかるように胃がんの術後、再発ともに、TS-1の有用性は確立した。今後は新規の分子標的治療薬とどのように組み合わせていくかということが課題になる。

 すでに、日本国内でも多くの分子標的治療薬候補の臨床試験が進められている。乳がん治療薬トラスツズマブを胃がんに用いる国際試験ToGA試験が進展しているほか、VEGF-Trapや腎細胞がんなどで日本国内で承認申請中のSutent、Sorafenibなどで準備が進められている。

 胃がんの化学療法ではいろいろな薬が使われるようになると、プライマリーエンドポイント(PE)を全生存期間(OS)に設定すると、試験を行うことが難しくなる。今後は無進行生存期間(PFS)をPEとする必要が高まることが予想され、審査当局と協議する必要がでてくると思う。

 OSに比べ、PFSの評価は難しい。一般的に、欧米の評価は日本よりも厳しいと考えることが妥当である。PFSを評価するポイントがぶれていないかなどを今以上に厳密に行っていく必要があり、これが日本国内の臨床試験の新しい課題といえるだろう。(談)

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