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[リポート]ASCO 2007 [07 Summer]
肝転移大腸がんにFOLFOX4の術前・術後療法が有効
大腸がん・胃がん

2007/07/17
日経メディカルCancer Review

仏Ambroise Pare Hospital手術・腫瘍部門部長のBernard Nordlinger氏

 FOLFOX4療法(5-FU+ロイコボリン+オキサリプラチン)を術前と術後に行うことで、手術単独よりもPFSが延長することが、仏AmbroisePare Hospital手術・腫瘍部門部長のBernardNordlinger氏らEuropean Organaization forResearch and Treatment(EORTC)グループが行ったフェーズIII試験の結果、明らかになった。大腸がんに肝転移が起こると、可能な限り肝臓を切除することが広く行われているが、再発率が高く、肝切除後5年の生存率は30~35%にとどまることが多い。

 FOLFOX4は、大腸がんの化学療法の標準レジメン。日本では転移進行大腸がんに限って承認されているが、欧米では術後補助療法として一般化している。この試験はFOLFOX4を術前に行い、生存期間の延長が得られるかどうかを確認するために行われた。

 試験は、被験者を2群に分け、1群は手術単独、もう1群には術前3カ月にFOLFOX4を6回、術後3カ月にやはりFOLFOX4を6回行うというもの(図3)。手術とFOLFOX4療法を受けた被験者は151人、手術単独群は152人だった。3.9年(中央値)を経過した時点で手術+FOLFOX4群では、42.4%が再発を免れた。他方、手術単独群では、手術を免れたのは33.2%にとどまった。3年無進行生存率(PFS)では、9.2%の開きが出たことになり、ハザード比は0.73(CI:0.55-0.97)、P=0.025となった。Nordlinger氏は、「この試験の結果から肝転移がある大腸がんにFOLFOX4を術前、術後に行うことが新しい標準治療になるかもしれない」と語った。

CetuximabにFOLFORIへの上乗せ効果

 EGFR(上皮細胞成長因子受容体)を発現している未治療の転移大腸がんに対する抗体医薬Cetuximab+FOLFIRI(5-FU+ロイコボリン+イリノテカン)vs.FOLFIRIでは、Cetuximabを併用することによってPFSの改善効果が確認された。ベルギーUniversity Hospital GasthuisbergのEric Van Cutsem氏らの多国籍フェーズIII試験(CRSYSTAL:Cetuximab combined withiRinotecan in first line therapY for metaSTaticcolorectAL cancer)で明らかになったもの。

 試験では、1000人を超える被験者を群に分け、1 群にはFOLFIRIに抗EGFR抗体医薬のCetuximab(IV400mg/㎡ on day1 then250mg/m2weekly)を併用、もう1群にはFOLFIRIのみを行った。その結果、Cetuximab+FOLFIRI(C+F)ではPFSは8.9カ月。一方のFOLFIRI単独群では8カ月となった(p=0.0479)。

 また奏効率は、C+F群では47%、FOLFIRI群の39%に比べ上昇した。また肝転移だけを有するサブグループに限って解析すると、C+F群のPFSは11.4カ月、FOLFIRI群の9.2カ月を上回ったと報告された。

 有害事象は、いずれも認容範囲だったとCutsem氏は報告している。好中球減少症、発熱性好中球減少症の発生頻度は両群で違いはなかった。処方の見直しを必要とするGrade3/4の有害事象の頻度もCetuximabとの併用によって上昇することはなかった。皮膚反応も想定範囲内だった。

 なおFOLFIRIの代わりにFOLFOXを用いた試験(OPUS:OxaliPlatin and cetUximab in firstline treatment of mCRC)も行われている。この試験でも、Cetuximab+FOLFOXの奏効率は46%、FOLFOX単独は36%と報告されている。

 CRYSTALトライアルにより、FOLFIRI、FOLFOXという転移大腸がんの標準レジメンに対するCetuximabの上乗せ効果が確認されたことになる。日本でもFORFIRIやFOLFOXが普及しつつあり、さらにCetuximabは審査中で、今回の成果は近い将来日本の大腸がん治療にも影響を与える可能性がある。ただし、問題はコスト。欧米では、Cetuximabの費用はベバシズマブを上回る年間1500万円とされる。PFSにして1カ月未満という今回の結果をどう評価するか。現場では医師と患者や家族の頭を悩ませることになるかもしれない。

TS-1+シスプラチンが進行胃がんの全生存期間を延長

 進行胃がんに対して、ピリジン拮抗薬のTS-1にシスプラチンを併用したアームとTS-1単独アームとを比較したフェーズIII試験(SPRITS)の結果も口演で報告された。試験は、日本国内の多施設オープンラベルで行われたもの。305人の患者をランダム化し、TS-1単独群では、TS-1を毎日2回、24日連続で服用したのち、14日の休薬期間を設けた。一方のTS-1+シスプラチン群では、TS-1を毎日2回21日間に加え、8日目にシスプラチン静注、14日間休薬という方法で、行われた。TS-1の用量は、いずれも1回40mg/m2

 その結果、TS-1とシスプラチンの併用群では、生存期間中央値が13カ月だったのに対して、TS-1単独群では、11カ月(p=0.0366)。無病生存期間は併用群が6カ月、単独群が4カ月だった。奏効率では、併用群が54%、単独群が31%で、併用群が有意に高かった。静岡県立静岡がんセンターの消化器内科部長の朴成和氏は、「TS-1とシスプラチンの併用療法は進行胃がんにおいて1st lineの標準治療になる」と語っている(以下の囲み記事参照)。


囲み記事

「分子標的治療薬の実物大の姿が見えてきた年だった」

 今回のASCOで最も印象に残ったのは、ASCOのプレリナリーセッションの演題に選ばれた「Sorafenibにより進行肝細胞がん患者の全生存期間(OS)を有意に延長できた」というSHARPトライアルの発表だった。肝細胞がんが初めてメディカルオンコロジーの領域に入ってきた点において、本試験の意義は大きいと思われる。

静岡県立静岡がんセンターの消化器内科部長・朴成和氏

 また、肝転移がある大腸がんにFOLFOX4を術前・術後に使用して治癒率の向上が得られEORTCの発表にも注目したい。現在、JCOGが転移大腸がんを対象にした術後補助化学療法の臨床試験を計画しているが、本試験の結果を日本に導入するためには解決すべき問題点が少なくないが、大腸がん肝転移の周術期化学療法の有効性が確認されたことの意義は大きい。日本でも術前にFOLFOX(5-FU+LV+オキサリプラチン)を施行するかどうかについては即答困難である。

 米国に比べ、日本は診断から手術までの期間が短いことを考慮すると、術前FOLFOX4にこだわる必要はないのではないかとも思われる。

 ここ数年脚光を浴びてきたベバシズマブ(Bevacizumab)のFOLFOXやXELOX(カペシタビン+オキサリプラチン)との併用による大腸がんにおける上乗せ効果は、期待したほどではなかった。FOLFOR(I 5-FU+LV+イリノテカン)にCetuximabを併用した場合の上乗せ効果も同様であった。

 これまで期待先行できた分子標的治療薬の実物大の姿が見えてきたというのが今年のASCOの印象として強く残った。言い換えると、ここ数年、分子標的薬の導入による治療成績向上について、期待が大き過ぎたのかもしれない。その中で期待をつないだのは、FOLFIRIとベバシズマブを併用したBIC-C試験である。今年の発表でもまだMSTに到達していなかったことは、生存期間の延長効果が大きい可能性が考えられ、どこまで生存期間が伸びるかが注目していきたい。

 進行胃がんでは、われわれ日本のグループが発表したTS-1の研究が唯一の報告であった。ASCOの口演で日本からの発表が2題続いたことは誇らしく思えた。これらの結果を受けて、日本では、TS-1+シスプラチンのレジメンを標準とすることで異論はないと思う。世界の標準になるかどうかについては、M.D.AndersonのAjani先生を中心に展開しているFLAG試験(5-FU+シスプラチンとS-1+シスプラチンの比較)の結果を待つ必要がある。おそらく来年のASCOで発表されるだろうと思われるが、その結果に注目したい。

 「新たな成果がなかったという点」では、膵臓がんも印象的だった。ベバシズマブもCetuximabもまったくゲムシタビン(GEM)への上乗せ効果が認められなかった。日本の標準治療としては、GEM単独かあるいは一昨年のASCOでGEM単独に対して延命効果を示したGEM+Erlotonibを試みることになりそうだ。GEM+TS-1のフェーズⅡ試験が日本で行われ、GEMと単独比較する第III相試験が開始される予定である。海外でも近々に“GEM+α”の第III相試験が展開されるので、TS-1の位置づけが難しくなるであろうと思われる。一昨年にGEM failure後のFOLFOX療法がBest SupportiveCareに比べて延命効果を示したことが報告され、本年も、症例数が少ないために有意ではなかったが、FOLFOX療法が5-FU/LVに比べて無増悪生存期間に差を認めたことなど、“GEM+α”failure後の2nd lineの開発も重要であると思う。
(写真◎柚木裕司)

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