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トピックス6 [07 Summer]
東大医科研と岩手医大、膀胱がん化学療法の感受性を予測
バリデーション試験を準備

2007/07/09
日経メディカルCancer Review

 東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター教授の中村祐輔氏と岩手医科大学泌尿器科教授の藤岡知昭氏と高田亮氏らのグループが、膀胱がん手術前化学療法の感受性を予測する遺伝子検査法を開発、4月14日から神戸で開かれた日本泌尿器科学会総会で発表した。

 浸潤性膀胱がんに施行する根治的膀胱全摘術では、術前化学療法としてM-VAC(メソトレキサート、ビンブラスチン、アドリアマイシン、シスプラチン)が処方されることが多い。これは、手術前に腫瘍を縮小させ、手術の適応を広げることが目的。ところが、奏効する患者とそうでない患者が現れる。奏効しない患者では、治療のタイミングを無駄にすることにあるばかりか、不必要な有害事象に苦しむことになる。中村氏らの狙いは、このM-VACが奏効する患者をあらかじめ選抜するための遺伝子検査キットを開発することにある。この検査で「陽性」と判定されれば、M-VAC療法を行い、「陰性」と判定されれば、VMAC以外のレジメンかすぐに手術を選択することになる。

 同グループは患者から切除したがん組織からmRNAを抽出、cDNA化し、M-VAC療法が奏効した患者(感受性群responder)とそうではない患者(非感受性群non-responder)のcDNA量をマイクロアレイで比較、両群で発現パターンの異なる14種類の遺伝子をマーカー遺伝子として同定した。そこで、30人の患者で追試験(バリデーション試験)を実施、遺伝子の発現量が感受性患者に近いか非感受性患者に近いかでスコア化。各遺伝子のスコアの総和を各症例の「予測スコア」とした。この方法に従って30人の遺伝子を判定した結果、感受性群20人のうち13人を「感受性」と判定(予測率65%)、非感受性群10人の全員を「非感受性」と予測(予測率100%)することができた。

 また、感受性スコア陽性群と同陰性群とで生存期間を比較すると、両群で明らかな違いが表れた。この違いは、従来の予後因子であるTNM(腫瘍サイズ、リンパ節転移、遠隔転移)分類による分離よりも明瞭で、この予測スコアがこれまでの方法よりも優れた予後予測因子になる可能性も示された。

 その準備の一環として、同グループは、感受性予測カードシステムを試作している。これは試料と酵素試薬を小さなくぼみを多数持ったポートに注入し、遠心するだけでリアルタイムPCRが可能なシステム。「従来の手技に比べ、1/5から1/10の時間で感受性予測遺伝子の定量が可能」(高田氏)という。藤岡氏は「このカードシステムを使って、より多くの患者の試料を使ったバリデーションテストに進みたい」と語っている。

 総会の会場では、参加者から「患者からの生検試料の質の善しあしが検査結果に影響するのか」という質問が上がった。将来この検査が広く臨床現場に普及するには、質の悪い試料でも再現性が担保されるかどうかの検証も必要になりそうだが、演者の高田氏はこれまでの検討から試料の質の善しあしが再現性に影響する可能性は低いとの見解を述べた。

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