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ルポ・がん医療の現場 北海道がんセンター放射線科 [07 Spring]
地域格差・科間格差に挑む
放射線診療の北の本丸

2007/04/05
日経メディカルCancer Review

 日本のがん医療では放射線医療の拡充が課題となっているが、それだけ影が薄い放射線科の中にあって、専用の病床を持ち、各科とも連携し、診療の要になっている北海道がんセンター放射線科は異色の存在だ。「攻めの放射線治療」を進める同センターを取材した。(写真 ◎ 辻野 正人)

写真3 院長の山下幸紀氏 1966年北海道大学医学部卒業。71年同大学助手、80年旭川医科大学講師、81年同大学助教授。87年国立札幌病院産婦人科医長、99年同病院診療部長、2003年副院長。05年4月から現職

 北海道がんセンターといっても、地元の人間でさえもまだなじみが薄いかもしれない。前身は国立札幌病院。2004年4月に独立行政法人に移行するとともに名称を現在の北海道がんセンターに変更した。エイズ拠点治療病院、道央圏の第3次救急センターである救命救急センターを擁するが、厚生労働省から指定を受けた地域がん診療拠点病院であり、名実ともに北海道のがん医療の中核的な存在である。特徴は、外科や化学療法に加え、放射線治療という充実ぶりだ。

 院長の山下幸紀氏は、「年間手術例は3000例を超える。内視鏡手術が浸透して、外科、婦人科、泌尿器科、内科で患者が増えているが、加えて放射線治療の患者が急速に増えている。緩和医療でも放射線治療の役割が増していることも原因」と語る。

小線源治療も行う豊富な
治療メニューが自慢

写真2 放射線治療施設を案内する副院長の西尾正道氏

 放射線治療はリニアック(高エネルギー放射線装置)を3台、RALS(Remote After-Loading System、遠隔操作式後充填装置)を1台持つ。照射を行うのは週4日、1年間で新患972人(2005年)、再発患者を含め、年間1400例の治療を行っている。新患数は、全国700の放射線治療科にあって7番目の実績である。「中核病院の中には、新患しか診ない放射線科もあるが、再発した患者の数も多いところが、このセンターの特徴」と副院長で、長年放射線科を率いてきた西尾正道氏は語る。

 X線やγ線を使った従来の放射線治療のほか、ピンポイント照射といわれる定位放射線治療も行う。同時に、ここがセンターの大きな特徴なのだが、放射性物質を患者の体内に埋め込む、いわゆる小線源照射を高線量率照射と低線量率照射とに使い分けて行っている。

 最も古い第3リニアックは今年で25年目。今年、ようやく更新の予算が認められた。第3リニアックを見ながら、「日本で最も働いたリニアック」と西尾氏は笑う。

 特徴的なのは、国立札幌病院時代から47床を擁する放射線科の病棟。放射線科が病棟を持つ意義を、西尾氏は次のように語る。

写真1 北海道がんセンターの全景

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◎ Profile
独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター
住所/札幌市白石区菊水4条2丁目
院長/山下幸紀
電話/011-811-9111
診療科目/ 内科、精神科、神経科、呼吸器科、消化器科、循環器科、小児科、外科、乳腺内分泌外科、整形外科、形成外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻科、麻酔科、放射線科
ホームページアドレス/http://www.sap-oc.org
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写真5 47病床の放射線科病棟

 「病棟を持つことで、院内の発言力が強くなることができる。20の診療科を擁するこの病院で、1割のベッドを持っていることになる」と話す。外科や化学療法の後に、放射線照射を依頼される、「かけ屋業務」(西尾氏)に終始してしまう施設も少なくない。ほかの科のスタッフとカンファレンスを行い、対等な議論に加わることができるという。

 特に、放射線治療と化学療法を併用する「ケモラジ」は、これらを別々に行うよりも、同時併用する方が、高い治療成績を出すということが、世界的な常識となっている。「こちらの治療が終わったから、放射線をお願いします」では、医学的に確認されているはずの治療効果を上げることができない。47床によってEBMの実践を可能にしているということもできそうだ。

 放射線科が病棟を持つ2つめの意義は、「発言力」とも関係するが、収益力。独立行政法人になって、収益をどのように上げるかが、病院経営にとって無視できない問題になってきた。年間売り上げの85%は入院が上げている現在、病床の確保は大きな意味を持っている。

 加えて、低い放射能の線源を患者の体内に埋め込む、小線源医療を実施するためにも、放射線科が自由に使用できる施設が欠かせない。47床のうち2床は、10cm厚の鉛でできた壁や扉で放射線を遮蔽する特別の部屋「密封RI病室」に当てられており、いまや全国で10施設程度しかできない、小線源治療を可能にしている。

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