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化学療法アップデート [07 Spring]
心臓病をもつ患者における抗がん剤治療
心臓病とがん、どちらの治療を優先すべきか

2007/04/05
日経メディカルCancer Review

心臓病の治療
血圧、心電図、酸素飽和度に注意


 心疾患の治療は、もともと、がん治療前に診断されているものであれば、それぞれの心疾患に対しての加療を行えばよい。これは、循環器疾患の専門書に委ねる。

 化学療法中に出現してくるものに関しては、その重症度に応じて治療が変わるが、ハイリスク患者は、血圧、心電図、酸素飽和度は必須で、中心静脈圧、さらに重篤な心不全の場合には(スワンガンツカテなど使用しての集中治療での加療も必要であれば行うなど)モニターをして、なるべく早期に心疾患を診断して加療するようにしなければ、症例3のように生命の危険にさらすことになる。

 抗がん剤の心毒性に関しては、毒性の程度により、非致死性不整脈や心電図変化のみであれば続けて加療してよいが、致死性不整脈、心不全の兆候、急性虚血性症候群の発症が疑われる場合は、中止して早期に心疾患の精査加療を施行する。この多くの場合は、通常の加療で、抗がん剤中止により、適切な治療で回復する。

がん治療と心疾患治療との優先順位

 心疾患の診断がついた場合に、心臓の治療を優先するか、がん治療を優先するかが問題である。治療の優先順位は心機能と負荷検査の結果によって判定している。化学療法の場合、よほどの心不全(EF-30%>)や不応性の血行動態に影響を及ぼす不整脈、または致死性不整脈(心室性頻拍、心室性細動、完全房室ブロックなど)、重症虚血性心疾患(3枝病変、左冠動脈主幹部など)でなければ、がんと心臓を並列に治療することは可能である。ただし、がん手術を行う場合には、上記負荷シンチの結果が強く影響する。

 麻酔科との連携もあるが、十分な負荷ができ、負荷シンチで明らかな虚血が認められない場合は、たとえ心疾患が強く疑われても(実際冠動脈造影で確認されても)手術を先行させることも多い。また、虚血性心臓病の治療では、どうしても抗血小板剤の使用が不可欠である。このために、心臓治療を先行させると1カ月以上手術を待つ必要がある(最近の薬剤溶出性ステントの場合は、3~6カ月後の手術となり、手術時にもヘパリンの使用を推奨するところもある。また、薬剤溶出性ステント使用症例は、血栓閉塞予防で一生涯抗血小板剤を必要とする考えが一般的である)。

 このため、病変が致命的になる可能性が低い場合には抗狭心症薬、IABPの使用下でがん手術をまず施行する。また、最近の虚血性心臓病の手術もかなり成績が良くなり、また手術後の回復が早く、動脈バイパス手術施行例では2週間で回復して、心疾患診断後約1カ月でがん手術に成功した症例もあり、抗血小板剤の使用が困難な症例(消化管出血など)では、バイパス術の先行も十分考慮すべき心疾患の治療である。

最後に

 すでに、がん患者ががんだけで治療を満足する時代ではなくなってきている。心疾患だけでなく、脳神経疾患はもとより、糖尿病などの代謝疾患など、がん患者の背景が極めて多彩になってきている。このような状況下で、患者によりよい安全ながんの治療を供給するには、まず、患者自身の持つリスクを正確に判定し、次に抗がん剤のもつ重篤な副作用を認識したうえで必要となる科と連携し、治療中に起こりうる病態に速やかに対処できる体制を整えることが必要である。当院ではチーム医療を推進しており、1つの担当科の医師だけでなく、必要な科がチームを組んで治療を進めていくことが、解決策の1つと考えられる。


[参考文献]
1) Leppo JA, Dahlberg ST. Imaging for Preoperative Risk Stratification. Clinical nuclear cardiology:state of the art and future directions edited by Zaret BL, Beller GA. 3rd ed, Mosby, Inc. 2005、 p323-337.
2) 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2003-2004年度合同研究班報告):心臓核医学検査ガイドライン ;Cir J 2005 ;69 (Suppl IV) ;1125-1207
3) 水野 康、福田市蔵編;循環器負荷試験法理論と実際(改定大2版);診断と治療社 1986 p10
4) Pai VB, Nahata MC. Cardiotoxicity of chemotherapeutic agents: incidence, treatment and prevention. Drug Saf 2000;22(4):263-302

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