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●トピックス3 [06 Winter]
イリノテカンの遺伝子検査薬
第一化学薬品が年度内に申請へ

2007/02/07
日経メディカル Cancer Review

 積水化学グループの診断薬メーカー、第一化学薬品が近く塩酸イリノテカンの副作用のリスクを処方前に評価できる遺伝子診断薬の製造承認申請を行う。この診断薬を使用することによって、致死的な下痢や骨髄毒性が問題となる塩酸イリノテカンをより安全に使用できるようになると期待される。

 塩酸イリノテカンは体内で活性分子「SN-38」に変換され、抗腫瘍活性を表す。SN-38は、グルクロン酸転移酵素(UGT)によって解毒され、排出される。このUGTの活性が低下していた、あるいはもともと低い患者が使用すると、SN-38が過剰となり、重い副作用につながる。UGT活性には、UGT遺伝子のプロモーター領域の多型(1塩基置換多型:SNP)が関与し、特に多型の一つであるUGT1A1*28では、UGT遺伝子の発現量が低下、酵素活性が下がるために、この型の遺伝子を保持する患者に塩酸イリノテカンが投与されると、重い副作用が出現するリスクが高くなる。

 塩酸イリノテカンの副作用の発現には、個人差があることが以前から知られており、何らかの遺伝子の違いが関係していると考えられてきた。名古屋大学医学部附属病院・外来化学療法部助教授の安藤雄一氏と同呼吸器内科講師の長谷川好規氏らが、塩酸イリノテカンを投与された118人の患者について、重篤な下痢と白血球減少とUGT1A1多型との関係を調べる症例対照研究を進め、UGT1A1*28を持つ患者では、重篤な副作用が発現するリスクは7倍に上昇することを見出した(Pharmacogenetics,8,357,1998)。

 肝炎ウイルス(HBV,HCV)の遺伝子検査薬を開発するなど実績があった第一化学薬品がこの報告に注目、名古屋大学との共同研究の末に、検査薬の開発に結びついた。検出方法として、米国のベンチャー企業ThirdWave Technologies社(TWT)が開発した5'ヌクレアーゼの1種、クリベース(Cleavase)を用いて遺伝子多型を認識するインベーダー法を採用した。UGT1A1*28のほかに、やはり副作用リスクを高めることが明らかになったUGT1A1*6、UGT1A1*27も検査する。これら多型が陽性であるならば、副作用が発現するリスクが上昇することから、塩酸イリノテカンの用量を減らす、ほかの治療薬に変更するなどの対策が推奨される。

 すでに米食品医薬品局(FDA)は05年8月22日に、TWT社が製造したUGT1A1*28遺伝子多型診断薬を承認(詳細はこちら)している。また、これに先立つ6月には、米国内で塩酸イリノテカンを販売するPfizer社が、処方の際には患者のUGT1A1遺伝子多型を調べるよう添付文書を改訂している(関連記事28ページ)。日本国内でも診断薬の承認に合わせて添付文書が改訂される見込みだ。

 なお、米国で販売されている診断薬はUGT1A1*28を調べる1種類のみ。日本人を含むアジア人には存在する遺伝子多型UGT1A1*6、UGT1A1*27が、米国内にはほとんど見られないためだ。がん化学療法における人種差を考慮する重要性を、再確認させる事例といえるだろう(関連記事16ページ)。

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