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●トピックス2 [06 Winter]
「医療費についても医師からの説明ほしい」
東北大調査でがん患者の要望明らかに

2007/02/07
日経メディカル Cancer Review

 がん医療費が増大するなか、治療費の見通しに関する説明を患者は望んでいるものの多くの医師が、十分な説明ができていないことが東北大学大学院医学系研究科教授の濃沼信夫氏のグループがまとめ、9月の日本癌学会学術総会で報告したアンケート調査の結果で明らかになった。

 濃沼氏の研究の目的は、患者への利便性を向上させるべきというにとどまらず、現在の日本の医療財源の配分の不合理性を証明することにも置かれている。「医療費はがん医療など重い疾病の治療に優先的に配分されるべきなのに、日本の医療はそうした合理性に欠けている」と指摘している。

自己負担額は年間129万円
民間保険から平均92万円給付

東北大学大学院医学系研究科教授の濃沼信夫氏

 濃沼氏らは東北大、信州大、自治医大、国立がんセンター、静岡がんセンター、大阪成人病センター、神奈川県立がんセンターなどの全国の中核がん医療機関35施設を対象にがん患者、医師にアンケート調査を行った。調査に当たっては、実施施設の倫理委員会の承認を得るとともに、回答は匿名で連結不可能のデータ処理を行った。その結果、がん患者からは4,174人(回答率52.1%)から、がん臨床医からは691人(回答率32.5%)の有効回答を得た。

 がん治療で患者が医療機関の窓口で支払った平均金額は年間約129万円で、主な内訳は入院が50.6万円、外来12.9万円などで合計は128.4万円だった。健康食品や民間療法にも20.8万円支出していることが明らかになった。また民間保険料が25.5万円に達した。こうした自己負担額は、がんの部位によって異なり、胃がん(n=505)99.2万円、肺がん(n=325)139.6万円、大腸がん(n=267)129.9万円、乳がん(n=464)101.9万円、肝臓がん(n=49)103.1万円、前立腺がん(n=625)108.1万円、子宮がん(n=393)127.8万円だった。

 高額療養費として償還を受けた患者は49.0%であり、年間償還額は25.5万円だった。42.9%の患者が民間保険金給付を受けていたが、給付金は92.1万円だった(図2)。

医療費の説明を
「あまりしない」が62.7%
「まったくしない」も13.7%

 こうした経済的な負担について、医師は患者にどの程度説明しているのかも質問している(図3)。それによると、「必ずする」は回答した医師の5.2%、「たいていする」は18.4%にとどまり、「あまりしない」62.7%、「全くしない」13.7%で全体の4分の3の医師が医療費の説明に消極的か、していないことが明らかになった。患者の回答では「説明はなかった」が56.1%で、「覚えていない」14.9%を加えるとやはり、全体の4分の3が記憶に残る十分な説明を受けていないことがうかがえた。「医師、患者双方の回答の傾向が一致しており、経済的な負担の説明を4分の1の医師しか行っていないことは確かだと思う」と濃沼氏は語っている。

医療費の一律抑制の圧力に
抗する理論武装が必要


 同氏によると、がんの医療費は2015年に約3兆円になると推計される(治療87:1625,2005)。これに対抗して公的な医療費の抑制圧力の高まりも予想されると同時に患者の自己負担額の上昇も想定される。「がん医療は大切だから、医療費を減らすべきではないという主張はもっともだと思うが、その説得材料となる根拠が必要であり、今回の調査はその第一歩。がん医療に大きな費用がかかることを国民は、罹患するまで気が付かない現実がある。がん医療費のあるべき姿を国民的な議論にしていくためにも、実態把握は必要」と話す。

 がん医療の進歩を患者にあまねく届けるためには、経済面に関しても臨床現場での努力、制度の運営の工夫、医療制度改革の3つを同時に進めることの重要性を濃沼氏は強調している。特に医療制度については、「フランスでは風邪の場合、患者の自己負担は8割になるが、がんのような重い病気は自己負担がない。日本のように風邪もがんも同じ割合の負担でいいのかという点にまで踏み込んで議論していく必要がある」と指摘している。

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