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●トピックス1 [06 Winter]
続発する薬剤性肺障害は世界同時創薬への警鐘か

2007/02/07
日経メディカル Cancer Review

 非小細胞肺がん(NSCLC)治療薬ゲフィチニブに関する急性肺障害・間質性肺炎(Interstitial Lung Disease;ILD)のコホート内症例対照研究の結果をアストラゼネカが9月27日、発表した。これは、ILDの累積発生率と化学療法を比較してゲフィチニブの相対リスクを、ILDの発症危険因子を検討する日本で初めての試験となり、今後日本国内に続々と登場すると予想される分子標的治療薬のあり方を考える上でも重要な成果だ。

 この研究の結果、明らかになった事実は主に以下の4点だ。

(1)進行NSCLC患者における治療12週間のILDの累積発症率は約3.0%。ゲフィチニブ治療患者は約4.0%、化学療法者は約2.1%(表1)。ゲフィチニブのILD累積発症率は市販後調査「イレッサ錠250 プロスペクティブ調査(特別調査)」の5.8%( Medicine and Drug Journal41,772,2005)より低くなった。
(2)ゲフィチニブと化学療法間の背景因子の不均衡を調整した結果、ゲフィチニブ治療患者によるILD発症リスクは化学療法患者に比べ約3.2倍(95%信頼区間:1.9~5.4)。
(3)背景因子の不均衡調整の結果、ゲフィチニブによるILDの発症リスクは、化学療法治療を受けた患者に比べ、主に治療開始後4週間が高く、約3.8倍(95%CI:1.9~7.7)だった。一方、4週間後においてはゲフィチニブによるILD発症リスクは約2.5倍(95%CI:1.1~5.8)へとリスク差は小さくなった。
(4)ILDを発症した患者の死亡率はゲフィチニブ治療患者では31.6%。化学療法治療患者では27.9%となった(表2)。

ゲフィチニブのリスクは高いが
従来の化学療法でも高かった

日本医科大学呼吸器・感染・腫瘍内科教授の工藤翔二氏

 今回の研究の調整医師である日本医科大学呼吸器・感染・腫瘍内科教授の工藤翔二氏は、「日本国内のゲフィチニブ治療患者のILD発症リスクが海外に比べて非常に高いことが確認された」と説明する。今回のコホート内症例対照研究のILD累積発症率が、特別調査(市販後調査)のそれより低下したことについては「被験者集団の違いが反映して数値が触れることがあるので、あまり気にする必要がなく、米国内の事例よりも1桁多いということに注意すべきであろう」と語る。

 研究の結果、ゲフィチニブ、化学療法の、治療の選択した治療の種類に関わらず、ILDを発症しやすい危険因子として、以下の7点が浮上した。
・治療 
・既存の間質性肺炎
・初回診断からILD発症日までの期間が半年以内であること
・全身状態不良(PS2以上)
・正常肺占有率(CT画像による)が低いこと(50%以下)
・55歳以上
・心血管系の合併症あり

 これらのILD予測因子に関して、ゲフィチニブも化学療法でも違いはなかった。注目されるのは、ゲフィチニブを使用しない患者でも、ILD発症率が高かったことだ。米国のゲフィチニブ使用患者のI L D 発症頻度は、0.30%(表3)と1桁低い。したがって、ゲフィチニブの使用の有無に関わらず、日本のNSCLC患者のILD発症リスクは総じて高く、ゲフィチニブ使用でその発症率が底上げされたと見ることができる。「危険因子を見ると、肺の基底膜の損傷を修復する力が弱い人が発症しやすいという傾向がうかがえるが、なぜ日本人のILDの発症率が高くなるのかを、疾患感受性遺伝子の探索を含めて検討していくべき」と工藤氏は語る。

一般的に日本人には用量が
多過ぎるのではないか

 ゲフィチニブに限らず、日本人にILDが多く発生する事例が続いている(表3)。日本人患者に選択的に現れる有害事象の頻度はほかの有害事象よりも低いことが多く、それらを検出するためには大規模な被験者集団を用意する必要があり、実際は不可能。今後は従来よりも市販後調査の役割が増すことになると予想される。

 一方、工藤氏は、ILDを好発する薬剤で欧米と日本とで同じ用量が設定されていることに注目している。国際共同試験に日本からも参加するようになった。

 また海外のデータを日本国内の製造販売承認申請に利用できるようになったブリッジングが活発になった結果、国内に流通する薬剤の中に、日本人にとって用量が過大となり、これがILDの事例が相次ぐ原因の一つになっている可能性があるという。「関連遺伝子とともにこうした用量設定のあり方にも目を向けていくべきである」と工藤氏は語っている。

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