日経メディカルのロゴ画像

ルポ がん医療現場 国立がんセンター中央病院 [06 Winter]
がん難民量産工場の“汚名返上を目指す
緩和・在宅医療を強化する積極治療の総本山

2007/02/07
日経メディカル Cancer Review

[井尾クリニック]
電話があったその日に駆けつける


 国立がんセンターの会議で「甘い」と一喝した井尾氏のもとを訪ねる。井尾氏はもともと麻酔科医だったが、父親の死を契機に訪問診療・在宅ホスピス専門診療所を志したという医師だ。国立がんセンターから紹介された患者は10人程度。同じ立川市内の国立災害医療センターからの紹介患者は130人以上に達する。

 井尾氏は患者や家族から、最初の相談を受けると、とにかくその日のうちに訪問する責務を課している。こうすることによって、いつでも呼べば来てくれるという信頼感を患者や家族に与えることができるからだ。

写真11 井尾和雄氏 日本大学芸術学部写真科卒業の後に医学部に入った経歴を持つ

 最初の仕事は、診断と「今後」について患者、家族と話し合うことだ。「通常、この話し合いが1~2時間ある」という。退院した患者には自分の状態を理解していない患者もいる。そうした患者にも説明する。中には、進行末期で退院して、相談があった日に亡くなった患者もいた。国立がんセンター中央病院を退院した患者だった。「もっと早く退院させて、在宅に戻してほしい」と井尾氏は病院に抗議したという。

 紹介された患者のその後の経過は、患者が亡くなった時点で、紹介病院にフィードバックする。こうした情報のやり取りが、ターミナルケアには欠かせない。

写真12 ホワイトボードに診療する患者の氏名と往診、訪問看護の予定が掲示される 患者の容態が一目で分かるようにしている。「いよいよ」という患者の名札は左下にまとめる

体力の減衰の見極めが
医師の大切な役割


 在宅療養支援診療所を進める上で医師の側に望まれることは何か? 「疼痛管理ができないと話にならない。加えて、病院で勤務していたことを、在宅でもやろうとする医療は失敗する」と話した。

 例えば点滴。病院で高カロリーの点滴を受けながら退院してくる患者がいる。衰弱した体の都合を考慮しないで、一定量の点滴を受け続けると、浮腫や腹水、痰の原因となり患者を苦しめることになる。「病勢に合わせて点滴量を減らしていく見極めが医師の仕事であり、これによって患者の苦しみを減らすことができる」。

 国立がんセンター中央病院に望むことは何か。井尾氏に尋ねると、同氏はほとんど間髪を入れず「緩和ケアのスタッフには、とにかく現場に来てほしい」と語った。「自分たちが治療した患者が、どういうところで生活し、どういうところで死んでいくのかを見に来てほしい」。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日経メディカル Cancer Review

この記事を読んでいる人におすすめ