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ルポ がん医療現場 国立がんセンター中央病院 [06 Winter]
がん難民量産工場の“汚名返上を目指す
緩和・在宅医療を強化する積極治療の総本山

2007/02/07
日経メディカル Cancer Review

紹介のキーワードは
「スムーズに」


 国も在宅死を推奨し始めている。2006年度診療報酬改定で新設された「在宅療養支援診療所」の施設基準を届け出た医療機関は全国で1万2,000を超えたとみられる。

 24時間対応できる在宅療養支援診療所に認定されれば、在宅ターミナル加算としても1万点の算定も可能というもの。厚生労働省は当初、全国で4,000程度の認定を予想していたといわれることから、行政当局の思惑をはるかに超えた反響があったことになる。

 緩和ケア病棟を持たない国立がんセンター中央病院が在宅への患者紹介の充実を打ち出したことは、こうした在宅死への流れとは無縁ではない。会議で参加者が口にした課題も目指すところは、「国立がんセンター中央病院から地域医療機関への紹介をスムーズに行うための条件は何か」という風に言い換えることができそうだ。

 そのために国立がんセンター中央病院ができることは、治療が終わりに近づいた患者の情報を地域医療機関と共有化すること、さらに最新の疼痛緩和技術などの最新医療技術の地域移転を進める機関としての役割を果たすことだろう。そのためには、国立がんセンター自身が、紹介先の医療機関について、情報を得ておく必要があるといえよう。

 そこで、国立がんセンター中央病院と連携して在宅ターミナルケアを進める2つの在宅療養支援診療所を尋ねた。

[ホームケアクリニック川越]
在宅DBで情報開示に注力

写真8 川越氏が作成した在宅療養支援診療所データベースの初期画面(左)と検索情報入力画面(右)

 東京墨田区のJR両国駅の近く。幹線道路である京葉道路に面したビルに開業するホームケアクリニック川越。院長の川越厚氏は元東京大学婦人科助教授という経歴を持っている。退官後、市中病院の院長として緩和ケア病棟の運営に関わった後、在宅療養支援専門のクリニックを立ち上げ、国立がんセンター中央病院を退院した患者の在宅療養を支援してきた。

写真9 ホームケアクリニック川越のナースステーション

 先日、川越氏のもとに新聞記者が訪ねてきた。記者の問題意識は、治療後の患者のケアが十分ではない国立がんセンターのあり方にあったという。「昔はともかく、今はそうではないと答えた」と川越氏は言う。同院では、毎週水曜日に医師や訪問看護師が集まって患者の情報を報告し、今後の方針を議論するカンファレンスを開いている。そのカンファレンスには、国立がんセンター中央病院の緩和ケアチーム担当者も顔を出すという。

 「紹介しっ放しではなく、紹介した患者が、その後どうなったのかを国立がんセンターの担当者がフォローするようになった。紹介した先がどのような水準の医療を行っているか、国立がんセンターは把握しておく義務がある」と川越氏は指摘する。

写真10 川越厚氏 病院長時代の経験を踏まえて、緩和ケアは在宅で行うべきという信念を持っている

 在宅療養支援診療所の制度の発足にあたって厚生労働省の担当者と協議を重ねた経験を持つ川越氏は、制度の課題を診療所の情報公開が行われていないことだと考えている。そのために、同氏が進めているのが、在宅療養支援診療所のデータベースの構築だ。既に一部はネット上に公開し、地域や施設が可能とする技術のリストを簡単に知ることができる。ホームページを見ながら、「在宅ターミナルケアも量の確保が一段落した後では、質が問われる時代が来る」と話す。その評価軸を作る上でも、国立がんセンターと地域医療機関との連携はモデルケースとならねばならないと川越氏は語った。

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