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Report 診療報酬改定 [06 Autumn]
医師や病院の実力を点数に反映へ
治療成績の評価方法に課題

2007/02/07
日経メディカル Cancer Review

 厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は7月末、診療報酬基本問題小委員会を開き、「手術に係る施設基準等調査分科会」の設置を決めた。同分科会では医療機関や医師個人の手術件数と手術成績との相関関係を調査研究し、厚労省はこの結果を2008年度の診療報酬改定に反映させる方針だ。だが、治療成績の指標のあり方などを巡り、医療界から疑問の声も上がっている。(取材・文:上田 昇)

食道がんの手術風景
医師個人ではなくチームの力量を評価する必要がある(札幌恵佑会病院で、写真◎辻野正人)

 「手術に係る施設基準等調査分科会」設置の目的について厚生労働省保険局医療課は、「医療機関に対する患者の選択肢を広げるのが目的。治療成績は病院の手術件数によるのか、医師個人の件数によるのかをはっきりさせる。例えば手術件数が多く治療成績が良い病院でも、そこで働く医師が辞めた場合、成績はどのように変化するのか。患者にとって医療の質は見えにくいものだが、それをガラス張りにしていく」と説明する。

 7月末に開かれた中医協診療報酬基本問題小委では、手術に関する施設基準等調査分科会の検討事項として、(1)医療機関の手術件数や医師の症例数など手術成績に影響すると考えられる諸因子について、手術成績との関係に関する調査研究を実施し、その結果を踏まえて評価・検証を行う(2)患者が様々な情報に基づき適切に医療機関を選択することができるよう一層の情報開示を進める観点から、手術にかかわる情報開示のあり方(開示する情報の範囲、補足説明などの情報開示に当たっての留意事項、院内掲示の情報開示の方法など)について併せて検討する─としている。

ブレストピアなんば病院院長の難波清氏 。「治療成績をもとに評価する仕組みは必要」(写真◎森和人)

医療機関の力は
医師の力が左右


 調査研究計画については、患者の重症度、手術成績などの詳細な情報を収集し、施設間の比較を行う必要があることから、「前向き調査」を行う。前向き調査とは因果関係を検討するための疫学調査法の一つで、現時点での原因への曝露の有無、程度などを考慮し、いくつかの集団を設定、将来にわたって追跡調査して結果の発生状況を比較するという方法だ。

 また医療機関の手術件数だけでなく、医師個人の手術件数に関するデータを収集するとともに、患者の「重症度」「周術期死亡率」「手術時間」「出血量」「在院日数」などに関するデータなどについても集め、調査する。

 対象手術については、手術件数と手術成績との相関関係を明らかにするため、まれな手術ではなく、国内で一定程度実施されている手術とする。また、施設間の比較を行う必要があることから、手術件数の少ない医療機関から多い医療機関まで、幅広い調査を行う。

慶應義塾大学医学部外科教授の北島政樹氏 。「難しい治療とやさしい治療の重み付けが課題」(写真◎柚木裕司)

 こうしたことから、当面は海外データなどを踏まえつつ、手術件数と成績との相関がある程度存在すると考えられる「心臓血管外科」「呼吸器外科」「消化器外科」「整形外科」などの領域を対象に、実施可能な範囲で最大限の手術数について調査研究を行うことにしている。さらにこの結果を基に、必要に応じて対象手術を拡大することを検討する。

 分科会では8月に調査研究計画をスタート、07年夏をめどに最終報告をまとめる方針だという。基本問題小委ではこの報告を受け、08年度診療報酬改定における対応を検討することにしている。

 今回の調査研究への着手について、分科会委員である医療機関関係者は「手術件数と成績の指標となる様々なデータを病院だけでなく、医師個人から集め、科学的な評価、検証を行うことはこれからの医療を構築していく上でとても重要なことだ。医療機関がエビデンスに基づいた治療成績を一般に開示することで、患者本位の医療が前進すると考えられる」とその意義を力説する。

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