日経メディカルのロゴ画像

Inside USA [06 Autumn]
多彩な「がん情報センター」
患者の悩み解消に活躍

2007/02/07
日経メディカル Cancer Review

コールセンターで地理的制約超える

 有名病院や病院ランキングで上位に顔を出す病院だけが患者サービスを充実しても、そうした病院の売り物にはなったとしても、“均てん化(全国的に高い質のサービスを提供する)”が実現されるわけではない。米国で、全国の患者に同様なサービスを提供するという観点で大きな役割を果たしているのが、「コールセンター」と呼ばれる電話相談窓口だ。これも官民がそれぞれの特徴を活かして取り組んでいる。

写真6 米国がん研究所が運営するコールセンター(国立がんセンターの高山智子氏提供)

 “元祖コールセンター”はNCIのサービスだ。1976年に開始され、現在、100人弱の相談員で対応している(写真6)。業務時間は平日の朝から夕方まで。1994年には年間約60万件の電話を受けていた。2001年にはチャットによる問い合わせ回答を開始、2002年には電子メールによる問い合わせにも答えることにした。現在の年間電話本数は30万本弱である。

写真5 米国がん協会のコールセンターの風景

 一方、ACSは1997年に「全国がん情報センター」(National Cancer Information Center=NCIC)を設置。現在、約200人の相談員で、24時間365日の応対をしており(写真5)、年間電話件数は約120万。

 NCIもACSも、すでにNCIやACSが蓄積し、公開もしている情報データベースの中から、適切な情報を探し出すことをその基本的な役割としている。医学的なアドバイスをしたり、特定の医師や病院を勧めたりすることはしない。相談員は、看護師やソーシャルワーカーの資格や経験は必要なく、がんの経験者や関係者という背景も持たない場合が多い。「悩みの相談」というより、「情報提供」を旨とする。

 全人的な悩みの相談に関しては、患者団体が重要な役割を担っている。例えば、乳がんではワイ・ミー全米乳がん団体(Y-ME National BreastCancer Organization、Y-ME)が、24時間電話ホットラインを運営している。相談員は乳がんの経験者だ。運営資金には企業からの寄付を充てている。

写真7 すい臓がんアクションネットワークの共同創設者であるポーラ・キム氏(国立がんセンターの高山智子氏提供)

 膵がん患者団体の「すい臓がんアクションネットワーク」(Pancreatic Cancer Action Network=PanCAN)(http://www.pancan.org/)は、「患者連携サービス・仲間」(PALS=Patient and Liaison Services)を実施する。何度も繰り返し電話しやすいように、問い合わせ者に特定の相談員をアサインする。

 PanCAN共同創設者のポーラ・キム氏(写真7)は、「NCIのようなサービスでは本当に患者の悩み解決までは至らない。膵がんの疑問に特化し、訓練を受けた、経験の深い相談員と何度も話ができることで、ようやく安心と解決の糸口を与えられる」と語る。

「3つの装置」の平行育成を

 これまで見てきたように、米国では、多彩ながん情報サービスが発達していると同時に、中央データベース、病院相談窓口、コールセンターの3つが役割分担をしながら相乗効果を生んでいる。

 コールセンターや病院相談窓口は、中央データベースが作成するコンテンツを利用して回答をする。データベースなきところに相談は成り立たない。また、コールセンターが、利用者がいつでもどこからでも電話を掛けられる利便性を確保すると同時に、比較的単純な“情報提供型”の相談を担っている。“悩み相談型”の込み入った相談は、病院窓口で顔を付き合わせて行う方が適しているといえるだろう。

 また、官が必要不可欠な基本業務を実施し、民やボランティアが付加価値のある細やかなサービスを提供していることも注目点だ。

 10月のがん対策情報センターの開設により、日本でいよいよ患者向けのがん情報サービスが本格化する。だが、中央データベースの厚みはまだ格段に薄い。病院相談窓口は、全国のがん拠点病院に患者支援センターの設置が義務付けられたことは画期的だが、焦点はスムーズに業務を開始できるかどうか。静岡県立静岡がんセンターの「よろず相談窓口」のように機能を十分に発揮しているところはまだごく少数だ。全国の相談支援センターが速やかに機能するには、人材育成や研修を急ぐ必要がある。

 日本でも中央データベース、病院相談窓口、コールセンターが三位一体となって発達することが重要だ。中央データベースができてもコールセンターがなければ、その情報が広まらない。コールセンターが基本的情報伝達をすることで、各病院の相談支援センターの負荷が減る。コールセンターに寄せられる相談内容をフィードバックさせて、中央データベースのコンテンツをさらに充実させることも大切なポイントになるだろう。

 また、すでに日本においても多様な患者サービスを提供する患者団体が出はじめているが、それを育成するために助成金や研修の仕組みを整備することも欠かせない。

〔参考資料〕
「世界のがん情報提供サービス事情」
(上)コールセンターが世界の常識
(下)いつでも相談できるコールセンターを日本にも

国立がんセンター
がん予防・検診研究センター情報研究部
情報システム研究室 高山智子氏

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日経メディカル Cancer Review

この記事を読んでいる人におすすめ