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Inside USA [06 Autumn]
多彩な「がん情報センター」
患者の悩み解消に活躍

2007/02/07
日経メディカル Cancer Review

政府が率先、民も頑張る

 まず、中央データベース。国立の米国がん研究所(National Cancer Institute=NCI) は、PDQ(医師データ検索、Physician Data Query=PDQ)と呼ばれる大規模な情報集を形成している。がん疾病別のガイドラインが100本以上ある。これらは現在、日本語にも訳されている(がん情報サイト)。

写真1 米国がん研究所でがん種別情報コンテンツなどの制作を担当するリチャード・マンロー氏

 NCIのPDQ担当であるリチャード・マンロー氏(写真1)によると、こうした情報は、編集委員を務める全国100人以上の医師らによって支えられている。また、支持療法、補完・代替療法などに関する情報も充実している。さらに、臨床試験情報も集められており、約3000本の進行中の臨床試験をがん種別、試験タイプ別、地域別などで検索できる。

 中央データベースは、民間も積極的に構築している。中でも、米国がん協会(American Cancer Society=ACS)の存在は大きい。がん種別の病気解説の他に、精神的な対処法なども取り揃えている。また、全国各地に支部を持つ団体ならではの、草の根ネットワークで集めた各地の患者支援団体のリストなども魅力となっている。

 学会もこのところ患者向け情報提供に力を入れている。米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncologist=ASCO)は、患者向け情報提供コーナー「がんと共に生きる人」を拡充している。がんの解説以外にがん患者の社会的、心理的悩みもカバーする。がん専門医が臨床分野や専門医資格などから検索できる機能も付いている。

写真2 がん患者のための情報を大量に集めて凝縮した「がん経験者生存ツールボックス」

 さらには患者支援団体も多様なコンテンツを作成している。米国がん経験者連合(National Coalition for Cancer Survivorship=NCCS)(http://www.canceradvocacy.org/)は、がん患者が闘病中に役立つ知識や解説を集めてCD8枚セットにした「がん経験者生存ツールボックス」(写真2)を無料で配布している。

患者教育を重視する医療現場

 では、米国の病院ではどのように患者への情報提供が行われているのだろうか。米国の患者は、日本に比べて様々な立場の医療関係者からサポートを受けられるようになっている(図3)。医師が患者と話をする時間も日本より長く、看護師も日本ほど走り回っていない。さらには、患者が入院から外来に移行する際の闘病環境を確認したりするリエゾンナースのような職種もいる。

 ソーシャルワーカーも大きな役割を果たしている。ワシントンDCにあるジョージタウン大学のロンバルディ包括がんセンターで、10年の経験を持つジョアン・アサーソン氏(写真3)に聞いた。

 日本ではソーシャルワーカーの人員が非常に少ないこともあって、基本的に患者や家族からのアクションがあってから対応する。だが、ここでは待ちの姿勢ではない。まず、すべての患者に「いまソーシャルワーカーと話したいことがあるか」を尋ねる。簡単な1枚の調査票を渡して、困っていることがないかを聞くのだ。何らかの記入があれば、3日以内にソーシャルワーカーが患者に連絡することになっている。

写真3 ロンバルディ包括がんセンターのソーシャルワーカーであるジョアン・アサーソン氏

 アサーソン氏は自分の役割を次のように説明する。「一人ひとり状況も環境も違うので、用意したプランがそのまま当てはまることはなく、手作りで対応することが必要だ。特に病状や治療が変化したときにケアの連続性の面で問題が起こることが多く、医療チームのメンバーをうまくつなぐことで、そうしたことを丁寧に解決していくことが大切になる」。

 世界中から患者がやってくるミネソタ州ロチェスターのメイヨー・クリニック。がんセンターの1階に立派な患者図書室がある。約1000種類の資料が揃っている。NCI、ACS、NCCNが作成した資料はもちろん、メイヨー・クリニックが独自に作成したものもある。冊子類は無料でもらえる。

 患者教育担当のジャニン・コカール氏とケリー・フィー・シュローダー氏は、二人とも看護師資格を持つ。コカール氏は「患者が自分の病気を理解して医師とコミュニケーションを深めることがともて重要」と指摘。シュローダー氏は、「信頼できる情報を与えることが大切」と協調する。

写真4 スウェーディッシュ・メディカル・センターが患者に配布する資料集

 ワシントン州シアトルの有名病院スウェーディッシュ・メディカル・センターのがんセンターでは、すべての患者に約130ページの資料を渡す(写真4)。治療の流れ、副作用について、主な情報源などが完結に説明してあり、自分の検査結果、抗がん剤投与、その他の投薬、副作用の状況、医師への質問などが書き込める「患者日誌」も付いている。

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