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インタビュー [06 Autumn]
身近な悩みを解決する“小さな臨床研究”を推進
北里大学医学部麻酔科 チーム緩和 的場元弘氏

2007/02/07
日経メディカル Cancer Review

飲み会感覚で始まったSCORE-G
小さくて大切な悩みの解決で連携

― そもそもSCORE-Gを発足させた目的はどこにあるのですか。

的場 まだそんなに大きな組織ではないので、あまり大きいことは言えないのですが、現在の医療はエビデンスの裏づけが重視されます。日常診療では、多数の患者さんや医師、薬剤師を動員する多施設共同試験を組むほどではないが、どうしてもエビデンスを必要とする問題というのが、いくつもあります。

 身近で困っている問題を解決するような、小さな臨床研究を実施する仕組みがあったらいいなあと長いこと思っていました。

 そうするうちに、呼ばれて講演に行った地方の病院の先生や、あるいは研修で見えられた先生方と話しているうちに、同じ気持ちを持っている先生方がいることに気が付きました。そこで、本当に仲間うちなのですが、声をかけて立ち上げたのがSCORE-Gです。

 繰り返しますが、大それた組織ではありません。総勢36人で、医師は9人ほどです。医師の出身も消化器内科や呼吸器内科など様々で、基礎研究が専門の薬学者もいます。薬剤師は19人、看護師は8人が参加しています。基本的な姿勢は「まず研究ありき」ではなく、日常臨床の中で困っている問題の解決策を得るためのディスカッションを積み重ねた上で、研究を行うということです。

便へのこだわり便のイメージを患者、看護師、医師の間で統一しておくことが大切。(「緩和ケアにおける便秘の理解とケア」より)

 テーマの選択も、飲み屋でわいわいと悩みを語り合いながら決めることもあります。「こんなことで困っている」と誰かが言えば、「それは、私のところでもそうだ」となりますね。そこで手を挙げた人たちで集まって、研究計画書を作り前向き研究が必要とあれば倫理委員会も通します。

 オピオイド製剤の採用調査では一定の結果が出ましたので、なるべく早期に論文にしてしかるべき雑誌に発表することになると思います。来年はこの結果を基により拡大した調査を実施したいと考えています。今回の発表はSCORE-Gの会員がいる地域が中心となりました。もともとは全国規模での調査を考えていました。オピオイドの採用状況の調査とは麻薬の採用状況の調査ということで、必要以上に警戒される医療機関があるのではないかと考え、今回は限定的なものにしました。ですから、この結果を踏まえて拡大した調査を実施したいと思います。

的場氏の夫人がデザインした「WHO3段が出てくれば、うれしいですね。階除痛ラダー」をかたどった自動車のストラップ

レスキュー・ドーズ、
アセトアミノフェンの試験も


― オピオイド製剤の採用調査にほかにはどのような研究をされたのですか。

的場 やや専門的になりますが、レスキュー・ドーズの研究を行いました。きちんと痛み止めを使用していても、痛くなることがあります。このとき短時間で鎮痛効果が得られる塩酸モルヒネ水溶液や末、塩酸モルヒネ錠などの即効性モルヒネ製剤を使用します。

 1回の投与量(レスキュー・ドーズ)は、モルヒネ経口剤の場合は使用していた1日量の1/6量を1回に使用します。しかし、製剤の規格が10mg単位で決まっているために、単純に1/6にすると端数が出ることになります。

 そこで、厳密に1/6にした用量とおおよその目安量とで、同じ効果が得られ、副作用も問題ないかどうか調べる試験を行いました。その結果、両者に違いがないことが確認できました。つまり1日に基本使用量が70mgの場合、正式なレスキュー・ドーズは12mgとなりますが、10mg製剤を使っても同じ効果が得られることが確認できたわけです。

 アセトアミノフェンにも、大きな問題があります。わが国の添付文書の用量では国際的な推奨用量の半分しかなく、効果が弱いのです。そこで、倍増して使うことを試みたのですが、果たして期待通りの効果が表れることを確認できました。これらの成果も近く、論文として発表する予定です。

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