日経メディカルのロゴ画像

インタビュー [06 Autumn]
身近な悩みを解決する“小さな臨床研究”を推進
北里大学医学部麻酔科 チーム緩和 的場元弘氏

2007/02/07
日経メディカル Cancer Review

的場元弘氏(写真・清水真帆呂)

 緩和医療チームで活動する麻酔科医、的場元弘氏。全国の医療機関や薬学部のスタッフで組織された、がん疼痛・症状緩和に関する多施設共同臨床研究会(SCORE-G)を発足、活動を続けている。SCORE-G 立ち上げの理由を、的場氏は「身近で困っている悩みを解決するための小さな臨床研究が欲しかったから」と語る。国際的で大規模化する治験とは異なった草の根のエビデンス追求の姿に迫った。

― 第11回日本緩和医療学会総会(神戸市)でSCORE-Gとして、地域がん診療拠点病院や大学病院ががん疼痛治療に使用するオピオイド製剤の採用状況を調査して発表しましたね。オピオイド製剤の採用状況を調べた目的を聞かせてください。

的場 結果については、総会で発表した東北労災病院薬剤部の高橋浩子さんに聞いてほしいのですが、一般的にオピオイド製剤の採用状況は、その医療機関が緩和医療を受ける患者さんの細かなニーズにどの程度深く対応しているのかを知る指標になるのではないかと思います。

オピオイド製剤の採用が少ないと
患者の生活を制約する原因になる


― 品目が多いほど、患者さんの希望に対応していると言えるのですか。

的場 おおむね、そう言えると思いますね。例えば、「MSコンチン」(一般名:塩酸モルヒネ徐放剤)には10mg錠、30mg錠、60mg錠の3規格があります。1日に240mg服用が必要というときに、ここ(北里大学病院)では60mg錠を朝に2錠、夕方に2錠を飲んでもらうことにしています。しかし、仮に10mg錠しか採用していない医療機関となると、1日に24錠を患者さんに飲んでもらう計算になります。

 モルヒネだけではなく、ほかにも多くの薬を服用している患者さんに24錠を処方する医師はどうかしています。同時にそのオーダーに応じて出庫する薬剤師もどうかしていますけど(笑)。

 地域がん診療拠点病院の評価などにも、このオピオイド製剤の採用状況を反映してほしいと考えています。評価のために行われる面談調査で、その病院の院長先生が「うちの病院はこんなに立派なポリシーを持って医療に当たっている」と強調したとしますね。そのとき、必要に応じて面接官が「オピオイド製剤の採用数が、こんなに少なくていいのですか」と突っ込むようになってほしいものです。

― 具体的に聞きたいのですが、がん患者さんの疼痛管理をする場合、最低限、どのくらいのオピオイド製剤の種類や規格を採用しているべきなのでしょうか。

的場 まずモルヒネ製剤ですが、前出の「MSコンチン」や細粒の徐放剤「モルペス」など1日2回タイプのもの、他に1日1回の徐放剤で「カディアン」、「ピーガード」、「パシーフ」のいずれか、速効性のモルヒネ製剤にも粉末剤、錠剤があり、注射薬が10mg、50mg、200mgとあります。また坐剤も3規格あります。「オキシコンチン」(一般名:塩酸オキシドコン徐放剤)には5mg錠、10mg錠、20mg錠、40mg錠の4規格ありますが、いずれも必要です。

 また、貼付剤の「デュロテップ」(一般名:フェンタニル)には2.5mg、5mg、7.5mg、10mgの4種類があります。これらは欠かせないと思います。さらに、麻薬以外のアセトアミノフェンやNSAIDsなども使うことになりますから、最低でも20種類は必要になるはずです。

薬剤師には麻薬治療全般の
番人になってほしい

― こんなに使用する製剤が多いと病棟が混乱するという声も出てきそうです。

的場 そういう懸念も確かにありますが、そのときに現場を混乱させないようにすることが病棟薬剤師の仕事だといつも言っているんです。薬剤師というと薬剤の管理人だと思い込んでいる人が多いようですが、“薬剤の管理人”ではなく“薬物治療の番人”になってほしいのです。出庫までが自分の仕事だと考えている薬剤師も少なくありませんが、それは間違っています。

 むしろ出庫して、患者さんに使われた後が問題です。期待された結果が得られたか、副作用が表れたとしたらどのような副作用なのかを把握して、医師による処方を支援することが薬剤師の最も重要な仕事です。

 中には、医師が薬剤部まで麻薬を取りに行かされていることで、「きちんと管理している」と評価されている医療機関もあるようです。こういうことが、きちんとした麻薬管理だと考える人もいるようですが、大きな勘違いです。こういうことを続けていると、あってはならないことですが、ただでさえ多忙な医師も麻薬の処方をためらうようになりかねません。

 日本の医療機関にはまだ、麻薬の出庫管理だけが薬剤師の仕事という考えが強いようですが、これを改めて行きたいと思っています。

― SCORE-Gには薬剤師も参加していますね。

的場 薬剤師の活動を支援することがSCORE-Gの大きな活動目標の一つです。ある医療機関で医師が参加を希望しても、薬剤師が一緒に参加を希望しない場合は、原則的に参加を認めません。医師と薬剤師がペアで参加すること。これがSCORE-Gの基本姿勢を物語っていると理解してください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日経メディカル Cancer Review

この記事を読んでいる人におすすめ