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化学療法アップデート [06 Autumn]
乳がんの最近の治療方針
高嶋班研究、St.Gallenの成果を踏まえて

2007/02/07
日経メディカル Cancer Review

腋窩リンパ節切除の考え方

 レベル I(小胸筋より外側のリンパ節)、レベル II(小胸筋裏面のリンパ節)の郭清が標準であるが、リンパ節転移の程度、各施設の治療方針によりレベルI、またレベルIII(小胸筋内側のリンパ節)まで行うこともあり得る。今後、腋窩リンパ節郭清にセンチネルリンパ生検の情報を参考にする可能性がある。同定はRI法、色素法などがあるが、偽陰性率が高いと転移リンパ節を見落とすこととなり、検査手技の習得が重要である(写真1)。腋窩リンパ節の郭清の意義はstagingと補助療法の決定に有用であるが、生存率に影響を与えないと考えられている。従って、上肢のリンパ浮腫のリスクと治癒率との検討がなされるようになった。

低侵襲性手術

 乳がんは乳腺組織より発症する。非浸潤がんなどで乳腺内に腫瘍が限局している場合は、乳頭温存乳腺全切除術も可能である(図5)。乳頭に腫瘍浸潤がないことが前提であるが、一般的にシリコンで乳房再建すれば、術前とほぼ同じ乳房が温存可能である(写真2、表1)。

薬物療法の選択

 内分泌療法感受性症例には原則として内分泌療法あるいは化学内分泌療法が行われるが、非感受性症例には化学療法単独治療が行われる。日本癌治療学会では抗がん剤適正使用ガイドラインを策定し、公表している(写真3)。

1)アンスラサイクリン系薬剤

 原発性乳がん化学療法の第一選択薬剤はアンスラサイクリン系薬剤である。臨床試験NSABP B-23やNCIC CTG、FASG 05においてドキソルビシン(doxorubicin)やエピルビシン(epirubicin)に代表されるアンスラサイクリン(anthracycline)-containingレジメンとCMF(シクロホスファミド+メトトレキサート+フルオロウラシル)およびCMF-likeレジメンの比較がなされ、アンスラサイクリン系薬剤は乳がん術後補助療法の標準薬剤と考えられている。

 AC(アドリアマイシン+シクロホスファミド)療法はリンパ節転移陰性再発高危険群、あるいは陽性症例において最も一般的なレジメンである。FAC(フルオロウラシル+アドリアマシン+シクロホスファミド)やFEC(フルオロウラシル+エピルビシン+シクロホスファミド)のq3w×6 cyclesは閉経前症例のような再発高危険群に使用される。昨年、わが国でもドキソルビシンの60mg/m 2、エピルビシン 100mg/m2の国際標準用量が保険当局に認可され、アンスラサイクリンも国際標準用量が使用可能となった。

2)タキサン

 転移性乳がん治療薬としての微小管阻害薬タキサンの有効性が証明され、補助化学療法でもリンパ節転移陽性症例を中心に無再発生存期間、生存期間の改善をもたらす報告がある。リンパ節転移陽性症例においてAC×4 cyclesにパクリタキセル(paclitaxel)175mg/m 2のq3w逐次投与を行った群と行わなかった群が無作為比較され、パクリタキセルの追加は17%の再発リスクと18%の死亡リスクの低下を示した。

 BCIRG 001ではリンパ節転移陽性症例をFAC(500/50/500)3週毎6サイクルの群とTAC(75/50/500)3週毎6サイクルの投与で無作為比較している。その結果、TACはFACに比べ、28%のproportional再発リスク低下(p=0.001)と30%の死亡リスク低下(p=0.008)を認めた。リンパ節転移陰性患者に対する術後補助療法としてタキサンの投与を支持するデータは少ない10)

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