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化学療法アップデート [06 Autumn]
乳がんの最近の治療方針
高嶋班研究、St.Gallenの成果を踏まえて

2007/02/07
日経メディカル Cancer Review

 乳がんの化学療法は腫瘍径や広がり状況、ホルモン感受性の有無、閉経の状況、 HER2/neuの発現の違いなどによって、薬物やレジメンの選択が異なる。最近ではアロマターゼ阻害剤の登場など選択肢も増えており、患者の年齢や全身状態を吟味した対応が求められている。

埼玉医科大学乳腺腫瘍科 佐伯 俊昭

臨床腫瘍医、乳がん専門医の条件

 乳がんの治療を解説する前に、その病態について理解していただきたい。「臨床腫瘍医」という呼称が日本でも使用され始めたが、この臨床腫瘍医(専門医)の意味を理解していない人は案外、医療従事者に多い。外科医を例に取れば、固形がんの外科治療の専門家の中には、その経歴から「自分が腫瘍外科医である」と強調する人がいるが、これは大きな誤解である。「長年、がんの治療に従事しているから自分は腫瘍外科医である」と考えてはならない。

 乳がん専門医も同様である。乳がんの病態を深く理解し、乳がん細胞の性格、広がりを生物学的に捉え、緩和医療の技術も習得して診療を行える医師が、臨床腫瘍医、かつ乳がん専門医と考えるべきである。

 腫瘍学的には、固形がんの治療には局所治療として外科治療と放射線治療があり、全身治療としての薬物療法がある。診療ガイドラインは診断・疫学、外科療法、放射線療法、薬物療法に分かれており、エビデンスにもとづいたクリニカルクエスチョン形式で表記されている。

 もし、現在の乳がん診療を全体的に把握し、診療を進める上での参考にしたいのなら、ガイドラインの診断・治療アルゴリズムを参照されたい(図1~4)1-5)

乳がん患者の動向と診療ガイドライン

 乳がん罹患率は年々上昇し、年間約4万人が罹患している。その約90%は治癒可能なstageIIIまでの患者であり、5~10年間で25~33%程度が再発する。また、約10%は初回診断時に治癒の見込めないstageIVである。

 平成16年に厚生労働省「高嶋班」(主任研究者:高嶋成光・独立行政法人国立病院機構四国がんセンター院長)による乳がん診療ガイドラインの研究班が、乳がん領域のおける診療ガイドラインの作成に着手し、日本乳癌学会が高嶋班の研究成果を受け継ぎ、診療現場で使用可能な日本乳癌学会による乳がん診療ガイドラインとして完成させた。

 このガイドラインの作成は、図らずも現在の日本の乳がん医療の現状とエビデンスを重視する世界的標準治療との違いを浮き彫りにする役目も果たすことになった。もちろん日本の乳がん診療も十分世界に通用するのであるが、考え方の根本的な違いは明瞭であり、これは臨床腫瘍医の受け止め方に通じるものがあるように思う。

乳がんの標準的治療

1)外科治療
 原発性乳がん初期治療の標準治療は外科手術である(図1、表1)。術式としては乳房温存療法と乳房切除術がある。適応を規定する因子は以下の因子である。
(1)腫瘤径 3.0 cm 以下
(2)広範な乳管内進展を示す所見がない
(3)多発病巣がない
(4)放射線照射が可能
(5)患者が乳房温存療法を希望している

 日本乳癌学会では、「乳房温存療法のガイドライン」、「乳がん診療ガイドライン《外科》」でEBMと日本の診療データを基に外科治療の指針と解説を示している。

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