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ルポ ─ がん医療の現場 東京医科大学 臨床プロテオームセンター [06 Autumn]
分子標的薬のマーカーを探索
薬剤性肺炎の予測も視野に

2007/02/07
日経メディカルCancer Review

小さくてもリンパ節転移がしやすい
肺がん特有のたんぱく質を発見

写真1 アルブミンなどの不要なたんぱく質を除く前処理が重要

 腫瘍径が大きくなればなるほど、リンパ節転移の確率も増えることが普通。ところが、その通則に当てはまらない症例も少なくない。肺がんでは2cm以下でも縦隔リンパ節に転移しているものもあれば、逆に3cm以上でも転移していない症例もある。東京医大第一外科教授で、臨床プロテオームセンター発足の後見人的な立場でもある加藤治文氏(3ページ参照)と共同で、2cm以下でもリンパ節に転移していた患部のたんぱく質群、3cm以上でも転移していなかった患部のたんぱく質群を比較した。その結果、60種類のたんぱく質の産生量の増減パターンの組み合わせで両者が区別できることまで突き止めたという。

 この方法を臨床に応用すると、縮小手術にも道が開かれることになると加藤氏は期待する。「リンパ節に転移していないことが明らかになれば、現在の世界の標準術式である肺葉切除も不要。言い換えると機能温存手術も可能になる」。

 術前の血液でたんぱく質の検査ができること、さらに候補たんぱく質について、違う患者群で検証する必要がある。しかも、60種類のたんぱく質を調べることは現実的ではない。最終的に数個以下のたんぱく質を免疫染色などで調べるレベルにまで落とす必要がある。加藤氏は「この結果は2~3年以内に出したい」と語った。

ゲフィチニブの急性肺毒性も
予測できる可能性

写真2 最新の液体クロマトグラフィー・質量分析装置5台を擁す

 非小細胞肺がん患者に劇的に奏効した症例が得られる一方で急性肺毒性(ILD)による死亡例が出て社会問題化した分子標的治療薬のゲフィチニブ。厚生労働省はメーカーのアストラゼネカにILDの発症機序の解明を要請。同社に協力したのが臨床プロテオームセンターだった。

 6000人の患者血清から、ILDを発症した患者試料と発症しなかった患者試料とをケースコントロールスタディーの方法で比較した。詳細な結果は年内に報告されるが、約70%の精度でILDの発症を予測するたんぱく質マーカーの存在がほぼ確認できたという。

 ILDはゲフィチニブ以外の多くの薬剤で誘発される。仮に、このマーカー分子群が、ほかの薬剤のILDと相関することが明らかになれば、多くの薬剤の処方前検査として重用されることは間違いないだろう。さらに、ILDの発症リスクには人種差があることも報告されている。これらのマーカーの出現頻度に人種による違いが見られるかもしれない。

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