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ルポ ─ がん医療の現場 東京医科大学 臨床プロテオームセンター [06 Autumn]
分子標的薬のマーカーを探索
薬剤性肺炎の予測も視野に

2007/02/07
日経メディカルCancer Review

東京医科大学臨床プロテオームセンター教授の西村俊秀氏

 効く患者には劇的に効くが、そうでない患者にはまったく効かない。効かないどころか、間質性肺炎のような重篤の副作用すら出現する─。こうした特徴を持つ分子標的治療薬が今後のがん医療の分野で、続々と登場すると予想される。使い方が難しい新薬を安心して使うためには、事前に有効、無効を予知するマーカーの存在が欠かせない。患者の組織や血漿からがん細胞の特徴や分子標的治療薬の予測マーカーを探索しているのが東京医科大学臨床プロテオームセンター(新宿区)の教授、西村俊秀氏らだ(写真・清水真帆呂)。

研究室がある新宿住友ビル(向かって左)

 抗がん剤が効かなくなる、もしくは最初から効かない。こうした現象は現在のところ、画像診断上の腫瘍サイズの変化や全身状態、血清マーカーなどによって把握され、薬剤の処方や治療法の選択が行われている。しかし、実際にがん細胞の中でどんな変化が起こっているのか、あるいはあらかじめ起こっていたのかは明らかではない。

 ヒトの遺伝子の全塩基配列が明らかになり、また細胞の中で発現している遺伝子がマイクロアレイなどによって網羅的に捕捉できるようになった現在、細胞内の情報伝達パスウエーの解析を通じて、がん細胞の抗がん剤や放射線への感受性、あるいはがん細胞そのものの性質である転移や浸潤のしやすさを、治療法を選択する前に知りたいという欲求が強くなってきた。と、ここまでは、教科書的に説明できる。

 問題は、それをどうやって実現するかだ。がん細胞の内部では正常細胞とは異なった遺伝子発現、さらにたんぱく質の産生が起こっていると考えられる。そこで、そうした変化をとらえ、細胞レベルからがんを診断しようというのが、今回紹介する東京医科大学臨床プロテオームセンターだ。

 がん細胞を診断する方法としては遺伝子から調べる方法が確立している。しかし、細胞の性格は遺伝子が読み替えられたたんぱく質の産生パターンに負うところが大きい。そこで、セントラルドグマの最も下流に位置するたんぱく質を網羅的に調べ、がん細胞と正常細胞との違いから、がん細胞の素顔に迫ろうというのが同センターの試みだ。

 しかし、話はそんなにきれいに進まない。「まだまだ試行錯誤が続く」という同センター教授の西村俊秀氏だが、同氏の苦労談はしばしおいて、まずはこれまでの成果を紹介しよう。

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