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ルポ ─ がん医療の現場 藤田保健衛生大学七栗サナトリウム [06 Autumn]
生存期間を延長する緩和医療
患者と家族をともにサポート

2007/02/07
日経メディカルCancer Review

1981年三重大学医学部卒業。専門は肝胆膵・消化器外科、NST、緩和医学、終末期医療。自動車レースのチームドクターの経験もある

■ 談話
緩和医療は再生医療
末期といえど比較的早期に紹介を


藤田保健衛生大学医学部外科・緩和ケア講座教授
東口高志 氏

 末期がん患者は死が迫るとともに特有の身体症状や日常生活動作の障害が出現します。疼痛、食欲不振、便秘、不眠に加え、死期が近づけば、せん妄や不安などの症状も表れます。このような臨床症状に全人的な苦悩が加わり、末期がんの症状は複雑なものになります。

ぼろぼろの患者さんでも
全人的なアプローチで元気に


 入院してきたときは、ぼろぼろとしか形容できない状態の患者さんが非常に多い。しかし、そのような患者さんでも栄養を評価し、さらに全人的な医療を施すことによって、ほとんどの患者さんが元気になって、人間らしさを取り戻します。その意味で私は、「緩和医療は再生医療」だといっています。もちろん、最終的に患者さんは亡くなるわけですが、天国に気持ちよく送ってあげたい。
 まだまだ、なかなか緩和医療に患者さんを送らないとがんばる医師の方が多いようですが、それは誤解だと思います。もう少し早いうちから送っていただければ、末期がんといえども最期はかなり変わったものになると思います。
 また、緩和病棟というと静寂が支配していないといけないという思い込みがあるようです。私も最初、着任したきに、大声で話すと「しーっ」とスタッフから注意されました(笑)。でも、私は「なんで」と聞きました(笑)。今では、回診のときもおはようございますと大きい声で挨拶します。にぎやかに患者や医療スタッフが談笑している緩和病棟があってもいいはずです。それが、結果的に質が高い緩和医療につながります。
 「ありがとう」これも大切。スタッフにとって一番ありがたいのが患者や家族からの「ありがとう」ですから。挨拶って、緩和病棟にとって、意外と大切なんですよ。こうした癒しの医療環境が出来あがると、鎮痛薬の処方も減ります。痛みというのは主観的なところが、かなりありますからね。

患者の栄養状態が改善すると
病棟は清潔になる


 栄養状態が改善した患者では下痢も痰も減ります。下痢や痰は細菌を排出しようという生理現象ですが、栄養状態が改善すると免疫力が上昇して、結果的に感染症が減るのです。もちろん、下痢が出現するたびにその原因をきちんと医学的に見極める必要もありますが、少なくとも感染性の下痢は減ってきます。
 そうすると、病棟スタッフの負荷も減りますし、病棟全体の清潔度も上がります。以前は病棟に異臭があったのですが、最近は感じなくなりました。これだけで、患者が抱くストレスもだいぶ違ってくるはずです。(談)

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