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ルポ ─ がん医療の現場 藤田保健衛生大学七栗サナトリウム [06 Autumn]
生存期間を延長する緩和医療
患者と家族をともにサポート

2007/02/07
日経メディカルCancer Review

■ 風呂を改装して昨年完成した
■ コミュニティードーム


 病棟に入るとひときわ目を引くのが、先に紹介したコミュニティードームという空間だ。もとはリハビリテーション患者の入浴施設だったが、そこを改装して昨年12月に完成した。今年1月には、ドームの完成を記念して主に三重県の専門家が集まって緩和ケアのシンポジウムを開催した。
 「個室は長屋。すると井戸端会議のスペースが必要になるでしょう」と東口氏は笑う。ここで、患者たちはいろいろな悩みを語り合う。見舞いや付き添いの家族同士が情報交換する場でもある。こうした空間の必要性に気づいたのは、患者からの一言だった。「こうして入院していても、隣の人がどんな人なのかさっぱり分からない」。
 答えは患者が持っている──。美しい言葉だけれど、聞き入れてもらえなければ、いつしか患者もその家族も要望を口にしなくなるだろう。「いつでも聞き、しかも聞きっぱなしにしない」という緩和ケア病棟の姿勢を患者や家族に伝えるために、看護師の中から交代でコンシェルジェを選抜、悩みや苦情、要望の集約に当たっている。
 患者だけではなく、患者の世話をする家族の要望を受け入れて誕生した意外な施設もある。1人用のサウナ風呂だ(写真7)。患者も家族も利用できるサウナがある医療機関は珍しい。さっぱり汗をかく以外にサウナにはもう1つの役割がある。それは、これが完全防音施設であるということだ。
 「一人で大きな声を出す場所がない」。患者の世話をしている家族の一言がきっかけだった。
 こんなに新しい施設を作れば、かなりの持ち出しになるのではないか。そう聞くと、東口氏からは、「お金をかけて緩和医療を行っても、それが普及できないのでは、大学がやる意味はない。意外とお金はかかっていない。少なくとも赤字にはなっていない」という答えが返ってきた。
 読者の皆さんの勤務する病院で進行がんの患者にじょく瘡が出ていたら、現在の医療を振り返った方がいい。きっと何かが足りないのだ。

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