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ルポ ─ がん医療の現場 藤田保健衛生大学七栗サナトリウム [06 Autumn]
生存期間を延長する緩和医療
患者と家族をともにサポート

2007/02/07
日経メディカルCancer Review

■ 栄養が改善すれば、じょく瘡も
■ 感染症も減って、ケアが楽になる

写真12 患者の視線の高さで患者に触れながら語る

 入院患者に栄養障害が認められた場合、NSTはまずその原因ががん疾患由来の悪液質なのか医原性であるのかを吟味、判断する。次に欠乏しているビタミンや微量栄養素を補給する。この補給によって、症状緩和や食欲回復、さらにはじょく瘡の予防が可能になるという。 
 じょく瘡の予防というと患者の体位交換の励行を想像しがちだ。そう問いかけると、東口氏はかぶりを振って否定する。「体位交換ではありません。栄養状態がよくなると、患者は自分の足で歩くようになるので、じょく瘡ができにくくなる」。
 患者の活動性が高くなると、感染症も減る。NSTを組織するということは、医療スタッフの仕事を増えると考えがちだが、NSTの効果が上がると、逆にスタッフの負担が軽くなる。
 さらに高脂肪高たんぱく質含有栄養剤も提供する。これはとりわけ、肺転移・呼吸障害合併例患者の呼吸を楽にする働きが期待できる。「呼吸を楽にするためには、炭酸ガス(CO2)の排出を少なくすることが有効です。そのためには、糖ではなく脂肪を多く投与してあげることが効果的」(東口氏)。
 週始めに行う回診の最大の目的も、患者の栄養状態を教授とスタッフが把握することにある。

■ 最初に花壇に花を植え
■ 廊下の絵画の位置を下げた

図1 緩和ケアNSTの効果

 棒グラフは、東口氏が中心となって進めてきた緩和医療の結果を表している。緩和NSTの稼働の前後で、入院患者の平均生存期間が35.7日から62.3日に、経口摂取期間が28.6日から47.3日に、さらに40.9%だったじょく瘡の発生率が1.9%に低下した。
 この数字はNST設置のみによるものではない。そのために、サナトリウムでは癒し環境の構築、全人的医療の実践、コミュニケーション(相補的支援システム)を導入したという。これらの4本柱を、東口氏は呪文のように、取材中何度も口にした。おそらく東口氏が日ごろ、スタッフに口癖のようにして説いているのだろう。
 緩和ケアの実践は教授一人では達成できない。そのために、高尚なスローガンを達成するために、地道なところから着手する方法論も必要だということがよく分かった。03年に着任した東口氏がまず行ったことは、院内の花壇の枯れた花を抜いて、新しい花に植え替えたことだ。「今では予算がついたけれど、最初はポケットマネーでやった」という。
 さらに廊下にかかる絵画の位置。車いすやストレッチャーで移動する患者の視線の高さに合わせて、床から高さ140cmのところにくるようにかけられている。この140cmは、看護師らが、実際にストレッチャー横たわって決めた高さだという。「要は」と東口氏は言う。「日々の仕事を誰のためにやっているかという意識改革を行うことが大切。そうすれば、答えが患者にあることが分かってくる」。

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