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ルポ ─ がん医療の現場 藤田保健衛生大学七栗サナトリウム [06 Autumn]
生存期間を延長する緩和医療
患者と家族をともにサポート

2007/02/07
日経メディカルCancer Review

■ がんを取っても生活復帰できない
■ 医療に対して抱いた疑問が契機

写真10 回診前の朝のスタッフルーム

 以上は、三重県津市の市街から車で1時間ほど行った郊外にある藤田保健衛生大学七栗サナトリウムの教授回診の風景だ。同サナトリウムに緩和ケア病棟が開設されたのは97年。現在では18床に専従医師1人、専任医師3人、看護師12人、看護助手2人、介護福祉士2人がルーチンで業務に当たり、このほかに臨床心理士1人が週3回訪れるほか、薬剤師、栄養士、検査技師が加わる。さらに、オーダーに応じて放射線技師、歯科医、東洋医学鍼灸師が出入りするという陣容だ。これら緩和ケアチームを率いるのが教授の東口高志氏だ。
 東口氏のもともとの専門は外科。現在でも執刀している。しかし、その限界に気がついたことが、緩和医療に開眼するきっかけになったという。がんが取れて、合併症もないのに社会復帰できない。本当にこれでいいのかと考えたという。「以前は、痛みも我慢するように患者に促すことが行われていた。我慢して治癒するならばいいのだけれど、結局治らない。中には進行していないのに亡くなっていく患者もいました。患者の生活復帰の可能性を考えたときに、どうすれば人間らしく生きるか“逆算”できるようになった」。

■ がん患者の本当の死因は
■ 多くの場合、がんではない

写真11 毎週月曜日朝の病棟回診風景

 東口氏が手術と同じくらいに、あるいはそれ以上に頼りにしているのが、栄養療法だ。実は、がんで死ぬ患者の本当の死因が悪液質という場合が少なくない。本当にがんで死ぬのはまれだと東口氏は考える。また、がんの進行とともに患者から生きる力を奪っていく主犯も栄養障害という場合が多い。
 そこで力を発揮するのが管理栄養士や薬剤師、看護師で構成される栄養サポートチーム(NST)だ。栄養管理が末期進行がんにおける医療の最大の武器だと同氏はいう。03年10月に七栗サナトリウムの教授として着任した東口氏が最初に取り組んだことが緩和ケアNSTチームの立ち上げだった。
 病棟に入ってきた末期がん患者の栄養状態を見るとほぼ全例に中等度以上の栄養状態が認められるという。その原因というと、意外なことにがんの進展による悪液質や消化管閉塞によるものは少なく、むしろ“積極治療期間”中の栄養管理に問題があることによって栄養障害を来した医原性栄養障害例が多いという。

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